ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:k_konjaku:k_konjaku16-22

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

次のリビジョン
前のリビジョン
text:k_konjaku:k_konjaku16-22 [2015/12/11 21:15] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku16-22 [2015/12/11 21:18] (現在) – [巻16第22話 唖女依石山観音助得言語 第二十二] Satoshi Nakagawa
行 1: 行 1:
 今昔物語集 今昔物語集
-====== 巻16第22話 唖女依石山観音助得言語 第二十二 ======+====== 巻16第22話 唖女依石山観音助得言語 第廿二 ======
  
-今昔、誰とは知らず、中ごろ、京に階(しな)苟(いや)しからぬ人の娘有けり。形は極て美麗にして、生けるより唖((底本異体字「瘂」。以下、標題も含めてすべて同じ。))にてぞ有ければ、父母、明暮此れを歎き悲むと云へども甲斐無し。暫は、「神の祟か、若は霊の為るか」など疑て、仏神に祈請し、貴き僧を呼て祈らせけれども、長大するまで遂に物云ふ事無ければ、後には、父母、棄て知らざりけり。然れば、乳母のみ此の人を哀れむで過る程に、父母、打次(うちつづ)き失にけり。+今昔、誰とは知らず、中ごろ、京に階(しな)苟(いや)しからぬ人の娘有けり。形は極て美麗にして、生けるより唖((底本異体字「瘂」。標題も含めて、以下、すべて同じ。))にてぞ有ければ、父母、明暮此れを歎き悲むと云へども甲斐無し。暫は、「神の祟か、若は霊の為るか」など疑て、仏神に祈請し、貴き僧を呼て祈らせけれども、長大するまで遂に物云ふ事無ければ、後には、父母、棄て知らざりけり。然れば、乳母のみ此の人を哀れむで過る程に、父母、打次(うちつづ)き失にけり。
  
 弥よ、乳母、此の人を悲むで、歎き思ける様、「此の人に男を合せて、子を生ましめて、末の便とも為ばや。形美麗なれば、暫は見る人も自然ら有なむ」と思得て、有る殿上人の、形ち吉く、心に情有けるを、然気無くて合せてけり。女にも、乳母、泣々く此の由を云ひ聞せて、心を得させたれば、合て後、日来通ふに、男、女の美麗なるを見て、去り難く労たく思て、万を語ふに、女、惣て物を云はねば、暫は、「恥ぢらひたるか」と思ふに、物(も)の云はむと思たる気色乍ら、目に涙を浮ぶるを見て、男、「此れは唖也けり」と心得つ。 弥よ、乳母、此の人を悲むで、歎き思ける様、「此の人に男を合せて、子を生ましめて、末の便とも為ばや。形美麗なれば、暫は見る人も自然ら有なむ」と思得て、有る殿上人の、形ち吉く、心に情有けるを、然気無くて合せてけり。女にも、乳母、泣々く此の由を云ひ聞せて、心を得させたれば、合て後、日来通ふに、男、女の美麗なるを見て、去り難く労たく思て、万を語ふに、女、惣て物を云はねば、暫は、「恥ぢらひたるか」と思ふに、物(も)の云はむと思たる気色乍ら、目に涙を浮ぶるを見て、男、「此れは唖也けり」と心得つ。
text/k_konjaku/k_konjaku16-22.1449836115.txt.gz · 最終更新: 2015/12/11 21:15 by Satoshi Nakagawa