text:k_konjaku:k_konjaku13-17
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text:k_konjaku:k_konjaku13-17 [2015/08/05 21:17] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:k_konjaku:k_konjaku13-17 [2015/08/05 21:18] (現在) – [巻13第17話 雲浄持経者誦法花免蛇難語 第十七] Satoshi Nakagawa | ||
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而る間、「国々に行て、所々の霊験を礼まむ」と思て、熊野に詣るに、志摩の国を過る間に、日暮て忽に行宿るべき所無し。而るに、大海の辺に高き岸有り。其の岸に、大なる巌の洞有り。其の洞に居て宿しにけり。此れ、遥に人離れたる界也。洞の岸の上に、多の木隙無く生ひ繁りたり。 | 而る間、「国々に行て、所々の霊験を礼まむ」と思て、熊野に詣るに、志摩の国を過る間に、日暮て忽に行宿るべき所無し。而るに、大海の辺に高き岸有り。其の岸に、大なる巌の洞有り。其の洞に居て宿しにけり。此れ、遥に人離れたる界也。洞の岸の上に、多の木隙無く生ひ繁りたり。 | ||
- | 雲浄、洞の内に居て、心を至して法花経を誦す。洞の内生臭き((底本、「洞の生内臭き」。誤植とみて訂正。))限無し((底本、「事限し」。誤植とて訂正。))。然れば、此れを恐るる間、夜半に微風吹て例なき気色也。生臭き香、弥よ増(ま)さる。雲浄、驚き怖ると云へども、忽に立去るべき方無し。暗夜にして東西を見る事無し。只大海の波の立つ音許を聞く。 | + | 雲浄、洞の内に居て、心を至して法花経を誦す。洞の内生臭き((底本、「洞の生内臭き」。誤植とみて訂正。))限無し((底本、「事限し」。誤植とみて訂正。))。然れば、此れを恐るる間、夜半に微風吹て例なき気色也。生臭き香、弥よ増(ま)さる。雲浄、驚き怖ると云へども、忽に立去るべき方無し。暗夜にして東西を見る事無し。只大海の波の立つ音許を聞く。 |
而る間、洞の上より大なる者来る。驚き怪て、能く見れば、大なる毒蛇也けり。洞の口に有て、雲浄を呑まむとす。雲浄、此れを見て、「我れ、此にして毒蛇の為に命を棄むとす。但し、我れ法花の力に依て、悪趣に堕ちずして、浄土に生ぜむ」と思て、心を至して法花経を誦す。其の時に、毒蛇、忽に見えず成ぬ。其の後、雨降り、風吹き、雷電して、洪水、上の山に満ぬ。良久く有て、雨め止み空ら晴ぬ。 | 而る間、洞の上より大なる者来る。驚き怪て、能く見れば、大なる毒蛇也けり。洞の口に有て、雲浄を呑まむとす。雲浄、此れを見て、「我れ、此にして毒蛇の為に命を棄むとす。但し、我れ法花の力に依て、悪趣に堕ちずして、浄土に生ぜむ」と思て、心を至して法花経を誦す。其の時に、毒蛇、忽に見えず成ぬ。其の後、雨降り、風吹き、雷電して、洪水、上の山に満ぬ。良久く有て、雨め止み空ら晴ぬ。 |
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