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text:k_konjaku:k_konjaku12-40 [2015/07/20 19:29] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku12-40 [2015/07/23 16:21] (現在) – [巻12第40話 金峰山薢岳良算持経者語 第四十] Satoshi Nakagawa
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 ====== 巻12第40話 金峰山薢岳良算持経者語 第四十 ====== ====== 巻12第40話 金峰山薢岳良算持経者語 第四十 ======
  
-今昔、金峰山の薢の岳と云ふ所に、良算持経者((「算」は底本異体字、「筭」。標題以下すべて同じ。))と云ふ聖人有けり。本は東国の人也。出家してより後、永く穀を断ち塩を断て、山の菜、木の葉を以て食として、法花経を受け持(たもち)て、後日、夜に読誦して他の勤め無し。深き山に住して、里に出る事無し。+今昔、金峰山の薢の岳と云ふ所に、良算持経者((「算」は底本異体字、「筭」。標題以下すべて同じ。))と云ふ聖人有けり。本は東国の人也。出家してより後、永く穀を断ち塩を断て、山の菜、木の葉を以て食として、法花経を受け持(たもち)て、後日、夜に読誦して他の勤め無し。深き山に住して、里に出る事無し。
  
 而る間、心の内に思はく、「此の身は此れ水の沫也。命は亦朝の露也。然れば、我れ此の世の事を思はずして、後世の勤めを営てむ」と思て、旧里を棄てて、金峰山に詣でて、薢の岳と云ふ所に草の庵を結て、其れに籠居て、日夜に法花経を読て、十余年を経たり。 而る間、心の内に思はく、「此の身は此れ水の沫也。命は亦朝の露也。然れば、我れ此の世の事を思はずして、後世の勤めを営てむ」と思て、旧里を棄てて、金峰山に詣でて、薢の岳と云ふ所に草の庵を結て、其れに籠居て、日夜に法花経を読て、十余年を経たり。
  
-其の間、初は鬼神来て、持経者を擾乱せむと為(す)と云へども、持経者、此れには怖れずして、一心に法花経を誦す。後には、鬼神、経を貴むで、(このみ)・蓏(くさのみ)を持来て、聖人を供養す。加之、熊・狐・毒蛇等も、皆来て供養す。亦、聖人、幻の如くに見れば、形端正にして身に微妙の衣服を着せる女人、時々来て、廻て礼拝して返去ぬ。覚て、持経者、「此れ、十羅刹の中の皐諦女也」と疑ふ。+其の間、初は鬼神来て、持経者を擾乱せむと為(す)と云へども、持経者、此れには怖れずして、一心に法花経を誦す。後には、鬼神、経を貴むで、(このみ)・蓏(くさのみ)を持来て、聖人を供養す。加之、熊・狐・毒蛇等も、皆来て供養す。亦、聖人、幻の如くに見れば、形端正にして身に微妙の衣服を着せる女人、時々来て、廻て礼拝して返去ぬ。覚て、持経者、「此れ、十羅刹の中の皐諦女也」と疑ふ。
  
 凡そ、聖人、其の山の人来て、食物を与ふと云へども喜ばず。亦、人来て語ひ問ふ事有りと云ども答へず。只経を誦す。亦、眠れる時も、尚眠乍ら経を読音有り。 凡そ、聖人、其の山の人来て、食物を与ふと云へども喜ばず。亦、人来て語ひ問ふ事有りと云ども答へず。只経を誦す。亦、眠れる時も、尚眠乍ら経を読音有り。
text/k_konjaku/k_konjaku12-40.1437388176.txt.gz · 最終更新: 2015/07/20 19:29 by Satoshi Nakagawa