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text:k_konjaku:k_konjaku12-37 [2015/07/20 10:23] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku12-37 [2015/07/20 10:25] (現在) – [巻12第37話 信誓阿闍梨依経力活父母語 第卅七] Satoshi Nakagawa
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 而る間、堅固に道心発ければ、永く現世の名聞利養を棄て、偏に後世の仏果菩提を願ひけり。然れば、本山を去て、忽に丹波の国船井の郡□棚波の滝と云ふ所に行て、其(そこ)に籠り居て、法花経を誦し真言を満て、専に菩提を祈る。 而る間、堅固に道心発ければ、永く現世の名聞利養を棄て、偏に後世の仏果菩提を願ひけり。然れば、本山を去て、忽に丹波の国船井の郡□棚波の滝と云ふ所に行て、其(そこ)に籠り居て、法花経を誦し真言を満て、専に菩提を祈る。
  
-而る間、形貌端正なる童子、阿闍梨の前に出来れり。此れを何より此れる人と知らずして、怪び思ふ程に、童子、阿闍梨に向て、微妙の音を挙て誦して云く、「我来聴法花。遂果四弘願。当従其口出。栴檀微妙香。」と誦して、暫く阿闍梨の法花経誦するを聞て、即ち見えず。阿闍梨、奇異(あさまし)く思て、「何こへ行ぬるぞ」と思て求るに、更に無し。遂に誰と知らざるに依て、「天童の下て我れを讃むる也けり」と知て、涙を流して貴ぶ事限無し。+而る間、形貌端正なる童子、阿闍梨の前に出来れり。此れを何より此れる人と知らずして、怪び思ふ程に、童子、阿闍梨に向て、微妙の音を挙て誦して云く、「我来聴法花。遂果四弘願。当従其口出。栴檀微妙香。」と誦して、暫く阿闍梨の法花経誦するを聞て、即ち見えず。阿闍梨、奇異(あさまし)く思て、「何こへ行ぬるぞ」と思て求るに、更に無し。遂に誰と知らざるに依て、「天童の下て我れを讃むる也けり」と知て、涙を流して貴ぶ事限無し。
  
 而る間、父兼博、国司として安房の国に下向す。而るに、阿闍梨、父母の懃(ねんごろ)の言に依て、其の国に下向す。国に有る間、威勢限無くして、国人頭を低(かたぶけ)て敬ふ事限無し。爰に阿闍梨、心の内に思はく、「我れ、年来多の法花経を読誦し、法を修行して、必ず其の功徳無量ならむ。其れに、世に久く有らば、罪業を造て生死に輪廻せむ事、疑ひ有らじ。然れば、如かじ、疾く死て悪業を造らじ」と思て、必ず死ぬべき毒を尋て食はむと為るに、初は附子(ぶし)を食ふに死なず。次には「和多利と云ふ茸、必ず死ぬる物也」と聞て、山より取り持来て、密に食つ。其れにも尚死なねば、「此れ希有の事也。我れ、毒薬を食ふと云へども、法花経の力に依て死なぬ也」と思ふに、「刀杖不加。毒不能害」の文、思ひ合せられて、哀れに悲き事限無し。 而る間、父兼博、国司として安房の国に下向す。而るに、阿闍梨、父母の懃(ねんごろ)の言に依て、其の国に下向す。国に有る間、威勢限無くして、国人頭を低(かたぶけ)て敬ふ事限無し。爰に阿闍梨、心の内に思はく、「我れ、年来多の法花経を読誦し、法を修行して、必ず其の功徳無量ならむ。其れに、世に久く有らば、罪業を造て生死に輪廻せむ事、疑ひ有らじ。然れば、如かじ、疾く死て悪業を造らじ」と思て、必ず死ぬべき毒を尋て食はむと為るに、初は附子(ぶし)を食ふに死なず。次には「和多利と云ふ茸、必ず死ぬる物也」と聞て、山より取り持来て、密に食つ。其れにも尚死なねば、「此れ希有の事也。我れ、毒薬を食ふと云へども、法花経の力に依て死なぬ也」と思ふに、「刀杖不加。毒不能害」の文、思ひ合せられて、哀れに悲き事限無し。
text/k_konjaku/k_konjaku12-37.1437355422.txt.gz · 最終更新: 2015/07/20 10:23 by Satoshi Nakagawa