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text:k_konjaku:k_konjaku12-21 [2015/06/25 22:29] – 作成 Satoshi Nakagawatext:k_konjaku:k_konjaku12-21 [2015/06/25 22:32] (現在) – [巻12第21話 山階寺焼更建立間語 第廿一] Satoshi Nakagawa
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 次に仏渡り給ひぬれば、天蓋を鈎(つ)るに、仏師定朝が云く、「天蓋は大なる物なれば、鈎鐘共を打付けむが為に、編入(くみいり)の上に、横様尺九寸の木の、長さ二丈五尺ならむ、三支渡すべかりけり。其れを思ひ忘れて、兼て申さざりけり。何がせむと為る。只今、彼の木を上げば、先づ麻柱(あななひ)を結ふべし。亦、壁、所々壊るべし。然らば、多の物共損じて、今日の供養には叶ふべからず。此れ、極たる大事也」と。 次に仏渡り給ひぬれば、天蓋を鈎(つ)るに、仏師定朝が云く、「天蓋は大なる物なれば、鈎鐘共を打付けむが為に、編入(くみいり)の上に、横様尺九寸の木の、長さ二丈五尺ならむ、三支渡すべかりけり。其れを思ひ忘れて、兼て申さざりけり。何がせむと為る。只今、彼の木を上げば、先づ麻柱(あななひ)を結ふべし。亦、壁、所々壊るべし。然らば、多の物共損じて、今日の供養には叶ふべからず。此れ、極たる大事也」と。
  
-各、口々に喤(ののし)り合へる間に、大工□□の吉忠と云ふ者有り。其の伴の工の中に、其の中の間長として造ける工、此の事を聞て云く、「我れ、此の間を造りし間、梁の上に上げ過して、尺九寸の木の三丈なるを忘れたりき((底本頭注「忘レタリキノ五字丹本等ニヨリテ補フ」))。而るを、『勘当もや有る』とて、其の由を行事に申さざりき。□□其の木梁の上に有り。但し、其れも必ず天蓋を鈎らむ所に当りてや有らむ」と。定朝、此れを聞て、喜て、小仏師を登らしめて、「何様にか其の木は置たる」と見しむるに、仏師、天井に登て、此れを見て、返り下て云く、「慥に、其の木、天蓋鈎すべき所に当れり。塵許も直すべからず」と。其の時に登て、皆鈎金共を打付るに、露違ふ事無し。此れ亦希有の事と為る其の一也。+各、口々に喤(ののし)り合へる間に、大工□□の吉忠と云ふ者有り。其の伴の工の中に、其の中の間長として造ける工、此の事を聞て云く、「我れ、此の間を造りし間、梁の上に上げ過して、尺九寸の木の三丈なるを忘れたりき((底本頭注「忘レタリキノ五字丹本等ニヨリテ補フ」))。而るを、『勘当もや有る』とて、其の由を行事に申さざりき。□□其の木梁の上に有り((底本頭注「ニ有リノ三字丹本等ニヨリテ補フ」))。但し、其れも必ず天蓋を鈎らむ所に当りてや有らむ」と。定朝、此れを聞て、喜て、小仏師を登らしめて、「何様にか其の木は置たる」と見しむるに、仏師、天井に登て、此れを見て、返り下て云く、「慥に、其の木、天蓋鈎すべき所に当れり。塵許も直すべからず」と。其の時に登て、皆鈎金共を打付るに、露違ふ事無し。此れ亦希有の事と為る其の一也。
  
 世の末に成にたれども、事実なれば、仏の霊験此如し。何に況や、目にも見えぬ功徳、何許ならむ。世の人も、皆礼み仰ぎ奉るなめり。此くなむ語り伝へたるとや。 世の末に成にたれども、事実なれば、仏の霊験此如し。何に況や、目にも見えぬ功徳、何許ならむ。世の人も、皆礼み仰ぎ奉るなめり。此くなむ語り伝へたるとや。
  
text/k_konjaku/k_konjaku12-21.1435238986.txt.gz · 最終更新: 2015/06/25 22:29 by Satoshi Nakagawa