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text:jikkinsho:s_jikkinsho06-00 [2015/12/16 00:13] – 作成 Satoshi Nakagawatext:jikkinsho:s_jikkinsho06-00 [2015/12/16 01:11] (現在) – [6の1 ある人いはく孔子のたまへることあり・・・] Satoshi Nakagawa
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 十訓抄 第六 忠直を存ずべき事 十訓抄 第六 忠直を存ずべき事
-====== 51 ある人いはく孔子のたまへることあり・・・ ======+====== 6序 ある人いはく孔子のたまへることあり・・・ ======
  
 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
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 しかれば、主君にてもあれ、父母・親類にてもあれ、知音・朋友にてもあれ、「悪しからんことをば、必ずいさむべき」と思へども、世の末にこのことかなはず。人の習ひにて思ひ立ちぬることをいさむるは、心づきなくて、いひあはす人の心にかなふやうにも思ゆれば、天道はあはとも思すらめども、主人の悪しきことをいさむる者は顧(かへり)みを蒙ること、ありがたし。 しかれば、主君にてもあれ、父母・親類にてもあれ、知音・朋友にてもあれ、「悪しからんことをば、必ずいさむべき」と思へども、世の末にこのことかなはず。人の習ひにて思ひ立ちぬることをいさむるは、心づきなくて、いひあはす人の心にかなふやうにも思ゆれば、天道はあはとも思すらめども、主人の悪しきことをいさむる者は顧(かへり)みを蒙ること、ありがたし。
  
-さて、することの悪しきさまにもなりて、しづかに思ひ出づる時は、「その人のよく言ひつるものを」と思ひあはすれども、また心の引く方につけて、思ひたることのある時は、「むつかしく、またいさめずらむ」とて、「このことを聞かせじ」と思ふなり。これはいみじく愚かなることなれども、みな人の習ひなれば、腹黒からず、また心づきなからぬほどに、はからふべきなり。+さて、することの悪しきさまにもなりて、閑(しづ)かに思ひ出づる時は、「その人のよく言ひつるものを」と思ひあはすれども、また心の引く方につけて、思ひたることのある時は、「むつかしく、またいさめずらむ」とて、「このことを聞かせじ」と思ふなり。これはいみじく愚かなることなれども、みな人の習ひなれば、腹黒からず、また心づきなからぬほどに、はからふべきなり。
  
 すべて人の腹立ちたる時、強(こは)く制すれば、いよいよ怒(いか)る。さかりなる火に少水をかけんは、その益なかるべし、されば、機嫌をはばかて、和(やは)らにいさむべし。君、もし愚かなりとも、賢臣あひ助けば、その国乱るべからず。親、もし驕(おご)れりとも、孝子つつしむて随はば、その家全くあるべし。重き物なれども、船に載せつれは沈まざるがごとし。上下はかはれども、ほどほどにつけて、頼めらん人のためには、ゆめゆめうしろめたなく、腹黒き心のあるまじきなり。かげにては、また冥加を思ふべきゆゑなり。 すべて人の腹立ちたる時、強(こは)く制すれば、いよいよ怒(いか)る。さかりなる火に少水をかけんは、その益なかるべし、されば、機嫌をはばかて、和(やは)らにいさむべし。君、もし愚かなりとも、賢臣あひ助けば、その国乱るべからず。親、もし驕(おご)れりとも、孝子つつしむて随はば、その家全くあるべし。重き物なれども、船に載せつれは沈まざるがごとし。上下はかはれども、ほどほどにつけて、頼めらん人のためには、ゆめゆめうしろめたなく、腹黒き心のあるまじきなり。かげにては、また冥加を思ふべきゆゑなり。
text/jikkinsho/s_jikkinsho06-00.txt · 最終更新: 2015/12/16 01:11 by Satoshi Nakagawa