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text:ima:s_ima001 [2014/12/12 19:43] – [第1話 ] Satoshi Nakagawatext:ima:s_ima001 [2015/01/05 17:45] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
行 6: 行 6:
 大納言なりける人、内へ参りて、女房あまた物語りしける所にやすらひければ、この人の扇(あふぎ)を手ごとに取りて見けるに、弁の姿しける人を書きたりけるを見て、この女房ども、「鳴く音(ね)な添へそ野辺の松虫」と口々にひとりごちあへるを、この人聞きて、「をかし」と思ひたるに、「奥の方(かた)より、ただ今、人の来たるなめり」と思ゆるに、「これはいかに。『鳴く音な添へそ』と思ゆるは」と知りたり顔に言ふ音(おと)のするを、この今来たる人、しばしためらひて、いと人にくく、優なる気色(けしき)にて、「源氏の下襲(したがさね)の尻は、短(みじか)かるべきかは」とばかり、忍びやかに答ふるを、この男、あはれに心にくく思えて、「ぬしゆかしきものかな。誰ならん」とうちつけに浮き立ちけり。 大納言なりける人、内へ参りて、女房あまた物語りしける所にやすらひければ、この人の扇(あふぎ)を手ごとに取りて見けるに、弁の姿しける人を書きたりけるを見て、この女房ども、「鳴く音(ね)な添へそ野辺の松虫」と口々にひとりごちあへるを、この人聞きて、「をかし」と思ひたるに、「奥の方(かた)より、ただ今、人の来たるなめり」と思ゆるに、「これはいかに。『鳴く音な添へそ』と思ゆるは」と知りたり顔に言ふ音(おと)のするを、この今来たる人、しばしためらひて、いと人にくく、優なる気色(けしき)にて、「源氏の下襲(したがさね)の尻は、短(みじか)かるべきかは」とばかり、忍びやかに答ふるを、この男、あはれに心にくく思えて、「ぬしゆかしきものかな。誰ならん」とうちつけに浮き立ちけり。
  
-堪ふべくも思えざりければ、後にはさらぬ人に尋ねければ、「近衛院の御母、ひがごと、かうの殿の御局」とささやきければ、いでや、理(ことわり)なるべし。+堪ふべくも思えざりければ、後にはさらぬ人に尋ねければ、「近衛院の御母((美福門院得子))、ひがごと、かうの殿の御局」とささやきければ、いでや、理(ことわり)なるべし。
  
 その後、たぐひなき物思ひになりにけり。 その後、たぐひなき物思ひになりにけり。
text/ima/s_ima001.1418381007.txt.gz · 最終更新: 2014/12/12 19:43 by Satoshi Nakagawa