text:hosshinju:h_hosshinju4-06
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:hosshinju:h_hosshinju4-06 [2017/05/20 22:11] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:hosshinju:h_hosshinju4-06 [2017/05/20 22:14] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 4: | 行 4: | ||
===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | 昔、玄賓僧都、いみじう貴き人なれば、高きも賤しきも、仏のごとく思へりける中に、大納言なる人なん、年ごろことにあひ頼み給ひたりける。 | + | 昔、玄賓僧都(([[h_hosshinju1-01]]の玄敏に同じ。))、いみじう貴き人なれば、高きも賤しきも、仏のごとく思へりける中に、大納言なる人なん、年ごろことにあひ頼み給ひたりける。 |
かかる間に、僧都、そこはかとなく悩みて、日ごろになりぬ。大納言、おぼつかなさのあまりに、みづから渡り給ひて、「さても、いかなる御心地にか」なんど、細やかにとぶらひ給ふを、「近く寄り給へ。申し侍らん」とあれば、あやしくて、さし寄り給へるに、忍びて聞こゆ。「まことには、ことなる病にも侍らず。一日、殿の御もとへ詣でたりしに、北の方の形、いとめでたくて見え給へりしを、ほのかに見奉りて後、もの思えず心まどひ胸ふたがりて、いかにもものの言はれ侍らぬなり。このこと、申すにつけてはばかりあれど、深く頼み奉りて久しくなりぬ。いかでかは隔て奉らんと思てなん」と聞こゆ。 | かかる間に、僧都、そこはかとなく悩みて、日ごろになりぬ。大納言、おぼつかなさのあまりに、みづから渡り給ひて、「さても、いかなる御心地にか」なんど、細やかにとぶらひ給ふを、「近く寄り給へ。申し侍らん」とあれば、あやしくて、さし寄り給へるに、忍びて聞こゆ。「まことには、ことなる病にも侍らず。一日、殿の御もとへ詣でたりしに、北の方の形、いとめでたくて見え給へりしを、ほのかに見奉りて後、もの思えず心まどひ胸ふたがりて、いかにもものの言はれ侍らぬなり。このこと、申すにつけてはばかりあれど、深く頼み奉りて久しくなりぬ。いかでかは隔て奉らんと思てなん」と聞こゆ。 | ||
行 25: | 行 25: | ||
玄賓係念亜相室事 不浄観事 | 玄賓係念亜相室事 不浄観事 | ||
- | 昔玄賓僧都いみじうたうとき人なれば高きも賤も | + | 昔玄賓僧都イミジウタウトキ人ナレバ高キモ賤モ |
- | 仏の如く思へりける中に。大納言なる人なん。年比ことに | + | 仏ノ如ク思ヘリケル中ニ。大納言ナル人ナン。年比コトニ |
- | 相憑み給たりける。かかる間に僧都そこはかとなくなや | + | 相憑ミ給タリケル。カカル間ニ僧都ソコハカトナクナヤ |
- | | + | |
- | 給て。さてもいかなる御心地にかなんと。こまやかにとふら/n12r | + | 給テ。サテモイカナル御心地ニカナント。コマヤカニトフラ/n12r |
- | | + | |
- | 給へるに。忍てきこゆ誠にはことなる病にも侍らず。一日殿の | + | 給ヘルニ。忍テキコユ誠ニハコトナル病ニモ侍ラズ。一日殿ノ |
- | 御もとへまうでたりしに。北方の形いと目出て見へ給へり | + | 御モトヘマウデタリシニ。北方ノ形イト目出テ見ヘ給ヘリ |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | 懇に覚しはからふ事なれば。いなひ給んその用意して | + | 懇ニ覚シハカラフ事ナレバ。イナヒ給ンソノ用意シテ |
- | 僧都のかなひせさせ給へるに。いと事うるはしく法服た | + | 僧都ノカナヒセサセ給ヘルニ。イト事ウルハシク法服タ |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | 近くよる事なくて。中門の廊に出て物をなんかづきて | + | 近クヨル事ナクテ。中門ノ廊ニ出テ物ヲナンカヅキテ |
- | 帰りにければ。主弥たうとみ給事限りなかりけり。不 | + | 帰リニケレバ。主弥タウトミ給事限リナカリケリ。不 |
- | 浄を観じて其執をひるがへすなるべし。かく云は人の身/n14r | + | 浄ヲ観ジテ其執ヲヒルガヘスナルベシ。カク云ハ人ノ身/n14r |
- | | + | |
- | | + | |
- | 観に至りては。目に見へ心にしれりさとりやすく思やすし | + | 観ニ至リテハ。目ニ見ヘ心ニシレリサトリヤスク思ヤスシ |
- | 若人の為にも愛着し自らも心あらん時は必す此相を | + | 若人ノ為ニモ愛着シ自ラモ心アラン時ハ必ス此相ヲ |
- | 思べしと云り。大方人の身はほねししのあやつり朽たる家 | + | 思ベシト云リ。大方人ノ身ハホネシシノアヤツリ朽タル家 |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | 施し。たき物をうつせど誰かは偽るかざりとしらざる。 | + | 施シ。タキ物ヲウツセド誰カハ偽ルカザリトシラザル。 |
- | 海に求め山にゑたる味も一夜へぬれは悉く不浄となり/n14l | + | 海ニ求メ山ニヱタル味モ一夜ヘヌレハ悉ク不浄トナリ/n14l |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | | + | |
- | 捨つべし。身ふくれくさり乱れて終に白きかばねとなり | + | 捨ツベシ。身フクレクサリ乱レテ終ニ白キカバネトナリ |
- | 真の相を知故に念々に是を厭ひ愚なる者は。かりの | + | 真ノ相ヲ知故ニ念々ニ是ヲ厭ヒ愚ナル者ハ。カリノ |
- | 色にふけりて心をまどはす事たとへば。かうやの中の虫の | + | 色ニフケリテ心ヲマドハス事タトヘバ。カウヤノ中ノ虫ノ |
- | 糞穢を愛するが如しと云へり/n15r | + | 糞穢ヲ愛スルガ如シト云ヘリ/n15r |
text/hosshinju/h_hosshinju4-06.txt · 最終更新: 2017/05/20 22:14 by Satoshi Nakagawa