text:heichu:heichu22
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text:heichu:heichu22 [2016/12/27 11:27] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:heichu:heichu22 [2016/12/28 13:07] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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また、この同じ男、聞きならして、まだものは言ひ触れぬありけり。「いかで、言ひつかむ」と思ふ心ありければ、つねにこの家の門(かど)よりぞ歩(あり)きける。 | また、この同じ男、聞きならして、まだものは言ひ触れぬありけり。「いかで、言ひつかむ」と思ふ心ありければ、つねにこの家の門(かど)よりぞ歩(あり)きける。 | ||
- | かうありけれど、言ひつくたよりもなかりけるを、月などのおもしろかりける夜ぞ、かの門の前、渡りけるに、女ども、多く立てりければ、馬より下りて、この男、ものなと言ひ触れけり。答(いら)へなどしける。男、「嬉し」と思ひて、立ち留まりにけり。 | + | かうありけれど、言ひつくたよりもなかりけるを、月などのおもしろかりける夜ぞ、かの門の前、渡りけるに、女ども、多く立てりければ、馬より下りて、この男、ものなと言ひ触れけり。いらへなどしける。男、「嬉し」と思ひて、立ち留まりにけり。 |
この女ども、男の供なりける人に、「誰(たれ)ぞ」と問ひければ、「その人なり」とぞ、答(こた)へけるに、この女ども、「音にのみ聞きつるを」、「いざ、呼びすゑて、もの言はむ」、「いかがあると聞かむ」とて、「同じうは、この庭の月をかしきをも見せむ」と言ひければ、この男、「何のよきこと」とて、もろともに入りにけり。 | この女ども、男の供なりける人に、「誰(たれ)ぞ」と問ひければ、「その人なり」とぞ、答(こた)へけるに、この女ども、「音にのみ聞きつるを」、「いざ、呼びすゑて、もの言はむ」、「いかがあると聞かむ」とて、「同じうは、この庭の月をかしきをも見せむ」と言ひければ、この男、「何のよきこと」とて、もろともに入りにけり。 | ||
行 26: | 行 26: | ||
時雨のみふる屋なればぞ濡れにけん立ち隠れけむことや悔(くや)しき | 時雨のみふる屋なればぞ濡れにけん立ち隠れけむことや悔(くや)しき | ||
- | とありけるに、喜びて、また、ものなど言ひやれど、答(いら)へもせずなりにければ、言はでやみにけり。 | + | とありけるに、喜びて、また、ものなど言ひやれど、いらへもせずなりにければ、言はでやみにけり。 |
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text/heichu/heichu22.1482805620.txt.gz · 最終更新: 2016/12/27 11:27 by Satoshi Nakagawa