大和物語
これもおなじ中納言1)、斎宮の皇女2)を年ごろよばひ奉りて、今日明日逢ひなんとしけるほどに、伊勢の斎宮の御占(みうら)にあひ給ひにけり。「いふかひなく、口惜し」と、男、思ひ給ひけり。
さて、詠みて奉り給ひける。
伊勢の海の千尋(ちひろ)の浜に拾ふとも今はかひなく思ほゆるかな
となんありける。
承平二年卜定雅子母更衣周子 これもおなし中納言さい宮の御こをとし ころよはひたてまつりてけふあす あひなんとしけるほとに伊勢のさい 宮の御うらにあひたまひにけり いふかひなくくちをしとおとこおもひ/d46r
たまひけりさてよみてたてまつり たまひける 伊勢のうみのちひろのはまにひ ろふともいまはかひなくおもほゆるかな となんありける/d46l