大和物語
同じ中納言1)、殿の寝殿の前に、少し遠く立てりける桜を、近く掘り植ゑ給ひけるが、枯れざまに見えければ、
宿近く移して植ゑしかひもなく待ち遠(どほ)にのみ見ゆる花かな
と詠み給ひける。
同中納言とののしんてむのまへにすこ しとをくたてりけるさくらをちか くをりうへ給けるかかれさまにみえけれは やとちかくうつしてうへしかひもな くまちとをにのみみゆるはなかな とよみたまひける又おなし中納言/d37l