大和物語
同じ宮1)、おはしましける時、亭子院に住み給ひけり。
この宮の御もとに、兼盛2)参りけり。召し出でて、もののたまひなどしけり。
失せ給て後、かの院を見るにいとあはれなり。池のいとおもしろきに、あはれなりければ、詠みける。
池はなほ昔ながらの鏡にて影見し君がなきぞ悲しき
おなし宮おはしましけるとき亭子/d36l
院にすみ給けりこのみやの御もとに かねもりまいりけりめしいててもの の給なとしけりうせ給てのちかの院 をみるにいとあはれなりいけのいとをも しろきにあはれなりけれはよみける いけはなをむかしなからのかかみに てかけみしきみかなきそかなしき/d37r