醒睡笑 巻7 廃忘
若衆と二人寝(い)ねてありし法師が、暁、雨の降る音を聞き、「南無三宝、とめて朝食を振舞はずはなるまい。そら寝入りし、起きて帰るを知らぬふりにせんこそよからめ」と思案しければ、若衆、そと起きて行く。
「もはや門のそとへ出でぬべき」と思ひ、心もとなさに起きて見ければ、いまだ門の内にやすらへるを見付け、仰天し、立ちてゐながら目をふさぎ高いびきをかきごとは。
一 若衆とふたりゐねてありし法師か暁(あかつき)雨の ふる音を聞なむ三宝とめて朝食をふる まはずはなるまいそらねいりしおきて帰 るをしらぬふりにせんこそよからめと思案 しけれは若衆そとおきて行もはや門の/n7-30r
そとへ出ぬへきとおもひ心もとなさにおき て見ければいまた門の内にやすらへるを見 つけ仰天し立てゐながら目をふさきた かいひきをかき事は/n7-30l