醒睡笑 巻2 賢だて
目医者あり。その身の目は腐りてゐながら、「目薬は天下一也」と自慢し、「一度させば、かすみ晴るる。二度させば、まけも切るる1)」など広言せしを、「さて、そなたの目は何とて治らぬ」。「されば、わが薬妙なればこそ、頬先にてとどめたれ。さなくば頤(おとがひ)までも腐りなん」と。
一 目医者あり其身の目はくさりてゐながら めくすりは天下一也としまんし一度させは かすみはるる二度させばまけもきるとなと 広言せしを扨そなたの目は何とてなを らぬされはわか薬妙なれはこそ頬先にて とどめたれさなくは頤まてもくさりなんと/n2-50r