古今著聞集 怪異第二十六
清長卿1)貫首(くわんじゆ)の時、殿上人どもあひ伴ひて2)船岡に向ひて、虫を捕りけるに、風悪しく吹きて、清長朝臣の冠を吹き落してけり。
件(くだん)の冠、遠く吹かれ行きて、死人のかうべのありけるに、人のわざと着せたるやうにかかりにけり。人々あさみあへりけり。さてしもあるべきことならねば、いぶせながらその冠を取りて着てけり。その後四・五年ばかりありて失せられにけり。
かやうのことは怪しむべきことなり。
清長卿貫首のとき殿上人とも相伴て伴て船岡にむかひ て虫をとりけるに風あしくふきて清長朝臣の冠をふ き落してけり件の冠とをくふかれ行て死人のかうへの ありけるに人のわさときせたるやうにかかりにけり人々 あさみあへりけりさてしもあるへき事ならねはいふせ なからその冠をとりて着てけりそののち四五年はかり ありてうせられにけりかやうの事はあやしむへき事也/s466l