古今著聞集 怪異第二十六
同じき四年1)正月下旬に、同じ国2)の海辺、戞(ほこ)を打つ声聞こえけり。
夜明けて見れば、島根郡の境(さかひ)より、楯縫郡の境まで、一町あまりがほど、氷を重ねて塔を造りて、並べ立てたりけり。おのおの高さ三丈余り、めぐり七・八尺ぞありける。後には消えや失せけむ。
何のしわざといふことを知らず。恐ろしかりけることなり。
そはたちてありける同四年正月下旬に同国海辺戞 をうつこゑきこえけり夜あけてみれは嶋根郡のさかひよ り楯縫郡のさかひまて一町あまりかほと氷をかさねて 塔をつくりてならへたてたりけり各たかさ三丈あまり めくり七八尺そありける後にはきえやうせけむなに のしわさといふことをしらすおそろしかりける事なり/s465r