古今著聞集 興言利口第二十五
後鳥羽院1)の御時、性親2)が葦毛といふあがり馬ありけり。たまる者少なかりける中に、下野武景、かみを多く取り具して乗りけれども、なほ落ちけり。
それによりて、かみを短かく切りて、油綿(あぶらわた)を塗られたりければ、武景、いよいよたまらざりけり。
それよりぞ、武景をば「善知識の府生」とは人言ひける。
後鳥羽院御時性親かあしけといふあかり馬ありけり たまる物すくなかりける中に下野武景かみを多 とりくして乗けれとも猶おちけりそれによりてかみを みしかくきりてあふらわたをぬられたりけれは武景 いよいよたまらさりけりそれよりそ武景をは善知 識の府生とは人いひける/s421l