古今著聞集 術道第九
陰陽師吉平(晴明子)1)、医師雅忠2)と酒を飲みけるに、雅忠、盃を取りて受けて、しばし持(も)たりけるを、吉平見て、「御酒(みき)とく参り給へ。ただ今なゐのふり候はんずるぞ」と言ひけり。
その言葉たがはず、やがてふりければ、酒がぶときて、こぼれにけり。ゆゆしくぞ、かねて言ひける。
陰陽師吉平(晴明子)医師雅忠と酒をのみけるに雅忠 盃をとりてうけてしはしもたりけるを吉平みてみきと くまいり給へ只今ないのふり候はんするそといひけり 其こと葉たかはすやかてふりけれは酒かふときてこほれ にけりゆゆしくそかねていひける/s207l