古今著聞集 和歌第六
陰明門院1)、中宮の御時、六事の題を出だして、人々に思ふことを書かせられけり。定家卿2)・家隆卿3)なども同じく召しけるに、古歌に、
有明のつれなく見えし別れより暁ばかり憂きものはなし
この歌を両人同じく書きて参らせたり。
同心のほど、いと優(いう)に興あるよし、その沙汰ありけるとぞ。
陰明門院中宮の御とき六事の題を出して人々に思ふ 事をかかせられけり定家卿家隆卿なともおなしくめしけるに古哥に 在明のつれなくみえし別よりあか月はかりうきものはなし この哥を両人おなしくかきてまいらせたり同心の程いといふ に興あるよし其さたありけるとそ/s154l