古今著聞集 神祇第一
後三条院1)の御時、国の貢ぎ物、広田の御前の沖にて、多く入海の聞こえありければ、宣旨をかの社へ下されて、貢ぎ物を全うせられぬよし、逆鱗ありけるに、社の辺りの木、一夜に枯れにけり。
主上、聞こし召し、驚かせ給ひて、なだめ申されければ、木、もとのごとく栄えにけり。その後、船も入海せざりけり。
後三条院御時国のみつき物広田の御まへの澳にて おほく入海のきこへありけれは宣旨を彼社へ下されて みつき物を全せられぬよし逆鱗ありけるに社の辺の木 一夜に枯にけり主上きこしめしおとろかせ給てなため 申されけれは木もとのことくさかへにけり其後船も入海せさり けり大学寮の廟供には昔猪鹿をもそなへけるを或/s16r