text:yomeiuji:uji194
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
| 両方とも前のリビジョン前のリビジョン次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
| text:yomeiuji:uji194 [2019/12/07 15:15] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji194 [2025/06/29 10:58] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
|---|---|---|---|
| 行 7: | 行 7: | ||
| ===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
| + | |||
| + | [[uji193|<< | ||
| これも今は昔、南京((奈良))に仁戒上人といふ人ありけり。山階寺((興福寺))の僧なり。才学、寺中に並ぶ輩(ともがら)なし。 | これも今は昔、南京((奈良))に仁戒上人といふ人ありけり。山階寺((興福寺))の僧なり。才学、寺中に並ぶ輩(ともがら)なし。 | ||
| 行 18: | 行 20: | ||
| さて、年ごろ過ぎて、ある冬、雪降りける日、暮れ方に、上人、郡司が家に来ぬ。郡司、喜びて、例のことなれば、食物、下人どもにも営ませず、夫婦手づから、みづからして召させけり。湯など浴みて臥しぬ。暁はまた、郡司夫妻とく起きて、食物種々に営むに、上人の臥し給へる方、香ばしきことかぎりなし。匂ひ一家に宛まり((「宛まり」底本ママ。))、「これは名香など焼き給ふなめり」と思ふ。「暁はとく出でん」とのたまひつれども、夜明くるまで起き給はず。郡司、「御粥出で来たり。このよし申せ」と御弟子に言へば、「腹悪しくおはする上人なり。悪しく申して打たれ申さん。今起き給ひなん」と言ひてゐたり。 | さて、年ごろ過ぎて、ある冬、雪降りける日、暮れ方に、上人、郡司が家に来ぬ。郡司、喜びて、例のことなれば、食物、下人どもにも営ませず、夫婦手づから、みづからして召させけり。湯など浴みて臥しぬ。暁はまた、郡司夫妻とく起きて、食物種々に営むに、上人の臥し給へる方、香ばしきことかぎりなし。匂ひ一家に宛まり((「宛まり」底本ママ。))、「これは名香など焼き給ふなめり」と思ふ。「暁はとく出でん」とのたまひつれども、夜明くるまで起き給はず。郡司、「御粥出で来たり。このよし申せ」と御弟子に言へば、「腹悪しくおはする上人なり。悪しく申して打たれ申さん。今起き給ひなん」と言ひてゐたり。 | ||
| - | さるほどに、日も出でぬれば、「例は、かやうに久しくは寝給はぬに、あやし」と思ひて、寄りておとなひけれど、音なし。引き開けて見れば、西に向ひ、端座合掌して、はや死に給へり。あさましきことかぎりなし。郡司夫婦、御弟子どもなど、悲しみ泣きみ、かつは貴み拝みけり。「暁、香ばしかりつるは、極楽の迎へなりけり」と思ひ合はす。 | + | さるほどに、日も出でぬれば、「例は、かやうに久しくは寝給はぬに、あやし」と思ひて、寄りておとなひけれど、音なし。引き開けて見れば、西に向ひ、端座合掌して、はや死に給へり。あさましきことかぎりなし。郡司夫婦、御弟子どもなど、悲しみ泣きみ、かつは貴み拝みけり。「暁、香ばしかりつるは、極楽の迎へなりけり」と思ひ合はす。「『終りに会ひ申さん』と申ししかば、ここに来給ひてけるにこそ」と、郡司、泣く泣く葬送のこともとり沙汰しけるとなん。 |
| + | |||
| + | [[uji193|<< | ||
| + | |||
| + | ===== 万治二年版本挿絵 ===== | ||
| - | 「『終りに会ひ申さん』と申ししかば、ここに来給ひてけるにこそ」と、郡司、泣く泣く葬送のこともとり沙汰しけるとなん。 | + | {{: |
| ===== 翻刻 ===== | ===== 翻刻 ===== | ||
text/yomeiuji/uji194.1575699313.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa
