text:yomeiuji:uji192
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text:yomeiuji:uji192 [2019/12/04 15:21] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji192 [2019/12/04 15:56] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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- | 今は昔、越前国に伊良縁(いらえ)の世恒(よつね)といふ者ありけり。とりわきてつかうまつる毘沙門((毘沙門天))に、物も食はで、物の欲しかりければ、「助け給へ」と申しけるほどに、「門(かど)に、いとをかしげなる女の、『家主(いへあるじ)にもの言はん』とのたまふ」と言ひければ、「誰にかあらん」とて出で会ひたれば、土器(かはらけに)物を一盛り、「これ食ひ給へ。物欲しとありつるに」とて取らせたれば、悦びて、取りて入りて、ただ少し食ひたれば、やがて飽き満ちたる心地して、二・三日は物も欲しからねば、これを置きて、物の欲しき折ごとに、少しづつ食ひてありけるほどに、月ごろ過ぎて、この物も失せにけり。 | + | 今は昔、越前国に伊良縁(いらえ)の世恒(よつね)(([[: |
「いかがせんずる」とて、また念じ奉りければ、また、ありしやうに人の告げければ、始めにならひて、まどひ出でて見れば、ありし女房、のたまふやう、「これ下し文(ぶみ)奉らん。これより北の谷、峰百町を越えて、中に高き峰あり。それに立ちて、『なりた』と呼ばば、もの出で来なん。それにこの文(ふみ)を見せて、奉らんものを受けよ」と言ひて去ぬ。この下し文を見れば、「米二斗渡すべし」とあり。 | 「いかがせんずる」とて、また念じ奉りければ、また、ありしやうに人の告げければ、始めにならひて、まどひ出でて見れば、ありし女房、のたまふやう、「これ下し文(ぶみ)奉らん。これより北の谷、峰百町を越えて、中に高き峰あり。それに立ちて、『なりた』と呼ばば、もの出で来なん。それにこの文(ふみ)を見せて、奉らんものを受けよ」と言ひて去ぬ。この下し文を見れば、「米二斗渡すべし」とあり。 |
text/yomeiuji/uji192.txt · 最終更新: 2019/12/04 15:56 by Satoshi Nakagawa