text:yomeiuji:uji131
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| text:yomeiuji:uji131 [2019/06/13 20:55] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji131 [2025/05/22 10:25] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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| 今は昔、頼りなかりける女の、清水((清水寺))にあながちに参るありけり。年月積りけれども、つゆばかり、その験(しるし)と覚えたることなく、いとど頼りなくなりまさりて、はては年ごろありける所をも、そのこととなくあくがれて、寄り付く所もなかりけるままに、泣く泣く観音を恨み申して、「いかなる先世の報ひなりとも、ただ少しの頼り給はり候はん」といりもみ申して、御前にうつぶし臥したりける夜の夢に、「御前より」とて、「かくあながちに申せば、いとほしく思し召せど、少しにてもあるべき頼りのなければ、そのことを思し召し歎くなり。これを給はれ」とて、御帳(みちやう)の帷(かたびら)をいとよく畳みて、前にうち置かると見て、夢覚めて、御灯明(あかし)の光に見れば、夢のごとく、御帳の帷、畳まれて前にあるを見るに、「さは、これよりほかに、賜ぶべき物のなきにこそあんなれ」と思ふに、身のほどの思ひ知られて、悲しくて申すやう、「これ、さらに給はらじ。『すこしの頼りも候はば、錦をも御帳には縫ひて参らせん』とこそ思ひ候ふに、この御帳ばかりを給はりて、まかり出づべきやう候はず。返し参らせ候ひなん」と申して、犬防木(いぬふせぎ)の内に、さし入れて置きぬ。 | 今は昔、頼りなかりける女の、清水((清水寺))にあながちに参るありけり。年月積りけれども、つゆばかり、その験(しるし)と覚えたることなく、いとど頼りなくなりまさりて、はては年ごろありける所をも、そのこととなくあくがれて、寄り付く所もなかりけるままに、泣く泣く観音を恨み申して、「いかなる先世の報ひなりとも、ただ少しの頼り給はり候はん」といりもみ申して、御前にうつぶし臥したりける夜の夢に、「御前より」とて、「かくあながちに申せば、いとほしく思し召せど、少しにてもあるべき頼りのなければ、そのことを思し召し歎くなり。これを給はれ」とて、御帳(みちやう)の帷(かたびら)をいとよく畳みて、前にうち置かると見て、夢覚めて、御灯明(あかし)の光に見れば、夢のごとく、御帳の帷、畳まれて前にあるを見るに、「さは、これよりほかに、賜ぶべき物のなきにこそあんなれ」と思ふに、身のほどの思ひ知られて、悲しくて申すやう、「これ、さらに給はらじ。『すこしの頼りも候はば、錦をも御帳には縫ひて参らせん』とこそ思ひ候ふに、この御帳ばかりを給はりて、まかり出づべきやう候はず。返し参らせ候ひなん」と申して、犬防木(いぬふせぎ)の内に、さし入れて置きぬ。 | ||
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| されば、その衣をば納めて、かならず先途(せんど)と思ふことの折にこそ、取り出でて着ける、必ずかなひけり。 | されば、その衣をば納めて、かならず先途(せんど)と思ふことの折にこそ、取り出でて着ける、必ずかなひけり。 | ||
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text/yomeiuji/uji131.1560426952.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa
