text:yomeiuji:uji096
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| text:yomeiuji:uji096 [2018/08/17 21:04] – Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji096 [2025/05/11 21:51] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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| 今は昔、父母(ぶも)、主(しう)もなく、妻も子もなくて、ただ一人ある青侍ありけり。すべきかたもなかりければ、「観音助け給へ」とて長谷((長谷寺))に参りて、御前にうつぶし伏して申しけるやう、「この世にかくてあるべくは、やがて、この御前にて干死(ひじ)にに死なん。もしまた、おのづからなる便りもあるべくは、そのよしの夢を見ざらんかぎりは出づまじ」とて、うつぶし伏したりけるを、寺の僧見て、「こは、いかなる者の、かくては候ふぞ。もの食ふ所も見えず、かくうつぶし伏したれば、寺のため、けがらひ出で来て、大事になりなん。誰(たれ)を師にはしたるぞ。いづくにてか、ものは食ふ」など問ひければ、「かく頼りなき者は、師もいかで侍らん。もの賜ぶる所もなく、『あはれ』と申す人もなければ、仏の給はん物を食べて、仏を師と頼み奉りて候ふなり」と答へければ、寺の僧ども集まりて、「このこと、いとど不便(ふびん)のことなり。寺のために悪しかりなん。観音をかこち申す人にこそあんなれ。これ集まりて、養ひ候(さぶら)はせん」とて、かはるがはる物を食はせければ、持てくる物を食ひつつ、御前を立ち去らず候ひけるほどに、三七日になりにけり。 | 今は昔、父母(ぶも)、主(しう)もなく、妻も子もなくて、ただ一人ある青侍ありけり。すべきかたもなかりければ、「観音助け給へ」とて長谷((長谷寺))に参りて、御前にうつぶし伏して申しけるやう、「この世にかくてあるべくは、やがて、この御前にて干死(ひじ)にに死なん。もしまた、おのづからなる便りもあるべくは、そのよしの夢を見ざらんかぎりは出づまじ」とて、うつぶし伏したりけるを、寺の僧見て、「こは、いかなる者の、かくては候ふぞ。もの食ふ所も見えず、かくうつぶし伏したれば、寺のため、けがらひ出で来て、大事になりなん。誰(たれ)を師にはしたるぞ。いづくにてか、ものは食ふ」など問ひければ、「かく頼りなき者は、師もいかで侍らん。もの賜ぶる所もなく、『あはれ』と申す人もなければ、仏の給はん物を食べて、仏を師と頼み奉りて候ふなり」と答へければ、寺の僧ども集まりて、「このこと、いとど不便(ふびん)のことなり。寺のために悪しかりなん。観音をかこち申す人にこそあんなれ。これ集まりて、養ひ候(さぶら)はせん」とて、かはるがはる物を食はせければ、持てくる物を食ひつつ、御前を立ち去らず候ひけるほどに、三七日になりにけり。 | ||
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| その家主(いへあるじ)も、音せずなりにければ、その家もわがものにして、子孫など出で来て、ことのほかに栄えたりけるとか。 | その家主(いへあるじ)も、音せずなりにければ、その家もわがものにして、子孫など出で来て、ことのほかに栄えたりけるとか。 | ||
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text/yomeiuji/uji096.1534507497.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa
