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text:yomeiuji:uji094 [2015/03/22 03:42] – [第94話(巻7・第3話)三条中納言、水飯の事] Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji094 [2025/05/11 21:50] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 **三条中納言、水飯の事** **三条中納言、水飯の事**
  
-これも今はむかし、三条中納言といふ人ありけり。三条右大臣の御子なり。才かしこくて、もろこしの事、この世の事、みなしり給へり。心ばへかしこく、きもふとく、をしからだちてなんおはしける。笙のふえをなん、きはめて吹給ける。長たかく大にふとりてなんおはしける。+===== 校訂本文 =====
  
-ふとりのあまり、せめてくるしきまで肥給ければ、くすししげひでをよびて、「かくいみじうふとるをば、いかがせんとする。立居などするが、身のをもくいみじうくるしきなり」との給ば、重秀申やう、「冬は湯づけ、夏は水漬にてをめすべきなり」と申けり。+[[uji093|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺語』TOP]] [[uji095|NEXT>>]]
  
-そのままにめしけおなじやうにこへれば、せんかたなくて、又重秀をめて、「いひしままにすれど、そしるしもなし。水飯食てみせん」の給てのこどもめすにさぶらひ一人まいたれば、「例のやうに水飯してもてこ」といれば、しばし斗ありて、御台もてまいるをみれば御だい、かたよろひもてきて御前にすへつ御だい箸のだいばかりすへたり。+も今は昔三条中納言((藤原朝成))とい人ありけり。三条右大臣((藤原定方))の御子り。才かしこくて、唐土(もろこ)と、この世のこみな知給へり。心へかしこく肝(きも)太く、おからだちなんおける。笙の笛なんきはめ給ひけるたけ高く大きてなんおはしける
  
-つづき御盤ささげている。御まかないの台にをみれば御盤に、し干瓜三寸ばかに切て十斗もりたり。又、すしあゆのおせくぐひろらかるが、しらばかりををして、卅斗もりたり。+太りのあまり、せめ苦しきまで肥え給ひければ、医師重秀(くすししひで)を呼び、「かくみじう太をば、いがせんとする。立ち居する重くいみじう苦しき」との給へば重秀やう、「冬は湯漬け、夏は水漬けて物を召すべきなり」と申り。
  
-大なるかなまたり。みな御台にすへたり一人の侍、大なる銀銀のをたてて、をもたげもてまいりたり。+そのままに召しけれど、同じやうに肥え太り給ひければ、せんくて、た重秀て、「言ひしままにすれど、そのしるしもなし水飯食ひて見せん」とのたひて、をこども召すに、(さぶらひ)一人参りたれば「例やう水飯して持(も)て来(こ)」と言はれければ、しばしばりありて、御台持て参る見れば、御台、片具(かよろひ)持て、御前据ゑつ。御台に箸の台ばか据ゑたり。
  
-金鞠給たれば、かい御ものをすくひつつ高やかにあげて、に水をすこし入てまいらせたり。殿だいをひきよ給て、かなをとせ給へるに、さばかり大におはする殿の御手に「大なるなまかな」とみゆるは、けしうはあらぬほどなるべし+続きて御盤ささげて参る。御まかないの、台に据うるれば、中の御盤に、白き干瓜、三寸ばりて、かり盛りたり。また鮨鮎(すしあゆ)のおぐくに広らかなるが、尻頭(しかし)ばかりを押して三十ばかり盛りたり
  
-ほしうりを三り斗くひきりて、五六ばぬ。次に鮎二き食切て、五六斗やすらかにまい水飯引よせて、び斗はしをまはし給ふとみる程、おものみなうせぬ。「又」と、さし給はす+なる鋺(まり)具した。みな御台据ゑたり。いま一人の侍、大きなる銀の提(ひさげ)銀の匙(かひ)立てて、参りたり
  
-さて二三度にさげの物みなになれば、に入てもてまいる重秀これて、「水飯やくとめすとも、このぢやうめさば、さに御ふとりべきにあらず」と逃ていに+鋺を給れば、匙(かひ)に御物をすくひつつ高やか盛り上げて、そばに水を少し参らせたり殿、台引き寄せ給ひて、取らせ給へるに、さばかり大おはする殿の手に、「大きなる鋺かな」と見ゆるは、けしうはあらぬほどなるべし
  
-されば、いよいよ相撲などのやうにてぞおはしける。+干瓜を三切りばかり食ひ切りて、五・六ばかりまいりぬ。次に鮎を二切りばかりに食ひ切て、五つ六つばかり、やすらかに参りぬ。次に水飯を引き寄せて、二度(ふたたび)ばかり箸を回し給ふと見るほどに、おものみな失せぬ。「また」とて、さし給はす。さて二・三度に、提(ひさげ)の物みなになれば、また、提に入れて持て参る。 
 + 
 +重秀、これを見て、「水飯を役と召すとも、このぢやうに召さば、さらに御太り治るべきにあらず」とて、逃げて去にけり。 
 + 
 +されば、いよいよ相撲(すまひ)などのやうにてぞおはしける。 
 + 
 +[[uji093|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺物語』TOP]] [[uji095|NEXT>>]] 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これも今はむかし三条中納言といふ人ありけり三条右大臣の 
 +  御子なり才かしこくてもろこしの事この世の事みなしり 
 +  給へり心はへかしこくきもふとくをしからたちてなんおはしける 
 +  笙のふえをなんきはめて吹給ける長たかく大にふとりてなん 
 +  おはしけるふとりのあまりせめてくるしきまて肥給けれはく 
 +  すししけひてをよひてかくいみしうふとるをはいかかせんとする 
 +  立居なとするか身のをもくいみしうくるしきなりとの給は重 
 +  秀申やう冬は湯つけ夏は水漬にて物をめすへきなりと申 
 +  けりそのままにめしけれとおなしやうにこへふとり給けれはせんかた 
 +  なくて又重秀をめしていひしままにすれとそのしるしもなし水 
 +  飯食てみせんとの給ておのこともめすにさふらひ一人まいりたれは例 
 +  のやうに水飯してもてこ」といはれけれはしはし斗ありて御台もて 
 +  まいるをみれは御たいかたよろひもてきて御前にすへつ御たいに/103ウy210 
 + 
 +  箸のたいはかりすへたりつつきて御盤ささけてまいる御まかな 
 +  いの台にすふるをみれは中の御盤にしろき干瓜三寸はかりに 
 +  切て十斗もりたり又すしあゆのおせくくにひろらかなるかし 
 +  りかしらはかりををして卅斗もりたり大なるかなまりをくし 
 +  たりみな御台にすへたりいま一人の侍大なる銀の提に 
 +  銀のかいをたててをもたけにもてまいりたり金鞠を給たれ 
 +  はかいに御ものをすくひつつ高やかにもりあけてそはに水を 
 +  すこし入てまいらせたり殿たいをひきよせ給てかなまりをとらせ 
 +  給へるにさはかり大におはする殿の御手に大なるかなまりかなと 
 +  みゆるはけしうはあらぬほとなるへしほしうりを三きり斗くひ 
 +  きりて五六はかりまいりぬ次に鮎を二きり斗に食切て五六 
 +  斗やすらかにまいりぬ次に水飯を引よせて二たひ斗はしをまはし給ふ 
 +  とみる程におものみなうせぬ又とてさし給はすさて二三度に/104オy211 
 + 
 +  ひさけの物みなになれは又提に入てもてまいる重秀これ 
 +  をみて水飯をやくとめすともこのちやうにめさはさらに 
 +  御ふとりなをるへきにあらすとて逃ていにけりされはいよいよ相 
 +  撲なとのやうにてそおはしける/104ウy212
  
text/yomeiuji/uji094.1426963371.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa