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text:yomeiuji:uji084 [2014/04/10 03:49] – 作成 Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji084 [2025/05/08 16:30] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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-====== 第84話(巻6・第2話) ======+宇治拾遺物語 
 +====== 第84話(巻6・第2話)世尊寺に死人を掘出だす事 ======
  
 **世尊寺ニ死人ヲ掘出事** **世尊寺ニ死人ヲ掘出事**
  
-**世尊寺に死人を掘出す事**+**世尊寺に死人を掘出す事**
  
-いまはむかし、世尊寺といふ所は、桃園大納言住給けるが、大将になる宣旨かぶり給にければ、大饗あるじのれうに修理し、まづは祝し給し程に、あさてとてにはかにうせ給ぬ。つかはれ人、皆出散て、北方、若公ばかりなんすごくて住給ける。そのわかぎみは、とのもりのかみちかみつといひしなり。+===== 校訂本文 =====
  
-此家を一条摂政とり給て、太政大臣に成て、大饗おこなはれけり。坤の角に塚のありけるが、築地をつきいだして、そのすみはしたうづかたにぞ有ける。殿、「そこに堂をたてん。この塚をとり捨て、そのうへに堂をたてん」とさだめられぬれば、人々も「つかのために、いみじう功徳になりぬべき事也」と申ければ、塚をほりくづすに、中に石の辛櫃あり。+[[uji083|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺物語』TOP]] [[uji085|NEXT>>]]
  
-てみれば、の、年廿五六ばかりなる色うつくしうて、口びるの色など露かはらでゑもいはずうつくしげる、ね入たるやうに臥た。いみじううつくしき衣の色色なるをなん、きたりける。若ける物、にはに死たるにやつきうるはしくてすへたりけり。入たる物、なにもかうばき事、たぐひ+今は昔、世尊寺といふ所は、桃園大納言((藤原師氏))住み給ひけるが、大将になる宣旨かぶり給ひにければ、大饗あるじ料(れう)に修理しまづは祝ひし給ひしほどにあさてとて、にはに失せ給ひぬ。使れ人出で散りて、北の方、若公(わかぎみ)ばかりなん、すごくて住み給ける。その公は、主殿頭(とのもりのかみ)ちかみつ((師氏の次男近信))といひしな
  
-あさましがりて、人々立こみてに、乾の方より風吹ければ、色々なる塵になんて失にけり。かねのつきよりほかの物、つゆとまらず。「いみじきむかしの人なりとも、骨髪のるべきにあらず。かく風の吹に、ちりになりて吹ちらされぬるは希有の物なりといひてその比人あさましりける+この家を、一条摂政((藤原伊尹))、取り給ひて、太政大臣になりて、大饗行なはれけり。坤(ひつじさる)の角に塚のありける。築地をつき出だして、そのすみは襪形(したうづがた)にぞありける。殿、「そこに堂を建てん。この塚を取り捨てて、その上に堂を建てん」と定められぬれば、人々も「塚のために、いみじう功徳になりぬべきことなり」と申しければ、塚を掘り崩すに、中に石の唐櫃(からびつ)あり。 
 + 
 +開けて見れば、尼の、年二十五・六ばかりなる、色美しうて、唇(くちびる)の色など、つゆ変らで、えもいはず美しげなる、寝入りたるやうにて、臥したり。いみじう美しき衣の、色々なるをなん着たりける。若かりける者の、にはかに死にたるにや、金の杯(つき)、うるはしくて据ゑたりけり。入りたる物、何もかうばしきこと、たぐひなし。 
 + 
 +あさましがりて、人々こみてほどに、乾(いぬゐ)の方より風吹ければ、色々なる塵(ちり)になんなりにけり。金(かね)よりほかの物、つゆとまらず。 
 + 
 +「いみじきの人なりとも、骨髪のるべきにあらず。かく風の吹に、塵になりて、吹き散らされぬるは希有のものなり」と言ひて、そのころ、人あさましがりける。 
 + 
 +摂政殿、いくばくもなくて、失せ給ひにければ、「この祟りにや」と、人疑ひけり。 
 + 
 +[[uji083|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺物語』TOP]] [[uji085|NEXT>>]] 
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 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  いまはむかし世尊寺といふ所は桃園大納言住給けるか大将に 
 +  なる宣旨かふり給にけれは大饗あるしのれうに修理しまつは 
 +  祝し給し程にあさてとてにはかにうせ給ぬつかはれ人皆出散 
 +  て北方若公はかりなんすこくて住給けるそのわかきみはとのもり 
 +  のかみちかみつといひしなり此家を一条摂政とり給て太政大臣 
 +  に成て大饗おこなはれけり坤の角に塚のありける築地をつき 
 +  いたしてそのすみはしたうつかたにそ有ける殿そこに堂をたてん 
 +  この塚をとり捨てそのうへに堂をたてんとさためられぬれは人 
 +  々もつかのためにいみしう功徳になりぬへき事也と申けれは 
 +  塚をほりくつすに中に石の辛櫃ありあけてみれは尼の年 
 +  廿五六はかりなる色うつくしうて口ひるの色なと露かはらてゑもい 
 +  はすうつくしけなるね入りたるやうにて臥たりいみしううつくしき衣の 
 +  色色なるをなんきたりける若かりける物のにはかに死たるにや/87ウy178 
 + 
 +  金のつきうるはしくてすへたりけり入たる物なにもかうはしき 
 +  事たくひなしあさましかりて人々立こみてみる程に乾 
 +  の方より風吹けれは色々なる塵になん成て失にけりかねの 
 +  つきよりほかの物つゆとまらすいみしきむかしの人なりとも骨 
 +  髪のちるへきにあらすかく風の吹にちりになりて吹ちらされぬるは 
 +  希有の物なりといひてその比人あさましりける摂政殿いく 
 +  はくもなくて失給にけれはこのたたりにやと人うたかひけり/88オy179
  
-摂政殿、いくばくもなくて、失給にければ、「このたたりにや」と人うたがひけり。 
text/yomeiuji/uji084.1397069340.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa