text:yomeiuji:uji068
差分
このページの2つのバージョン間の差分を表示します。
次のリビジョン | 前のリビジョン | ||
text:yomeiuji:uji068 [2014/04/09 17:04] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:yomeiuji:uji068 [2018/03/26 12:35] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
---|---|---|---|
行 1: | 行 1: | ||
+ | 宇治拾遺物語 | ||
====== 第68話(巻4・第16話)了延房に実因、湖水中より法文の事 ====== | ====== 第68話(巻4・第16話)了延房に実因、湖水中より法文の事 ====== | ||
行 5: | 行 6: | ||
**了延房に実因、湖水中より法文の事** | **了延房に実因、湖水中より法文の事** | ||
- | 是も今は昔、了延房阿闍梨、日吉社へまいりて、かへるに辛崎の辺を過るに、「有相安楽行、此依観思」といふ文を誦したりければ、浪中に「散心誦法花、不入禅三昧」とすゑの句を誦する声あり。 | + | ===== 校訂本文 ===== |
+ | |||
+ | これも今は昔、了延房阿闍梨、日吉社へ参りて、帰るに、辛崎の辺を過ぐるに、「有相安楽行、此依観思」といふ文を誦したりければ、浪中に「散心誦法花、不入禅三昧」と末の句を誦する声あり。 | ||
+ | |||
+ | 不思議の思ひをなして、「いかなる人のおはしますぞ」と問ひければ、「具房僧都実因」と名乗りければ、汀に居て、法文を談じけるに、少々僻事(ひがごと)どもを答へければ、「これは僻事なり。いかに」と問ひければ、「よく申すとこそ思ひ候へども、生を隔てぬれば、力及ばぬことなり。われなればこそ、これほども申せ」と言ひけるとか。 | ||
+ | |||
+ | ===== 翻刻 ===== | ||
+ | |||
+ | 是も今は昔了延房阿闍梨日吉社へまいりてかへるに | ||
+ | 辛崎の辺を過るに有相安楽行此依観思といふ文を誦/72ウy148 | ||
+ | |||
+ | したりけれは浪中に散心誦法花不入禅三昧とすゑの句を | ||
+ | | ||
+ | すそと問けれは具房僧都実因と名のりけれは汀に居て | ||
+ | 法文を談しけるに少々僻事ともをこたへけれはこれは僻 | ||
+ | 事なりいかにと問けれはよく申とこそおもひ候へとも生を | ||
+ | へたてぬれは力及はぬ事なり我なれはこそこれ程も申 | ||
+ | せといひけるとか/73オy149 | ||
- | 不思議の思をなして、「いかなる人のおはしますぞ」と問ければ、「具房僧都実因」と名のりければ、汀に居て法文を談じけるに、少々僻事どもをこたへければ、「これは僻事なり。いかに」と問ければ、「よく申とこそ、おもひ候へども、生をへだてぬれば、力及ばぬ事なり。我なればこそ、これ程も申せ」といひけるとか。 |
text/yomeiuji/uji068.1397030683.txt.gz · 最終更新: 2014/04/09 17:04 by Satoshi Nakagawa