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text:yomeiuji:uji006 [2014/04/07 17:49] – 作成 Satoshi Nakagawatext:yomeiuji:uji006 [2025/04/28 23:27] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 +宇治拾遺物語
 ====== 第6話(巻1・第6話) 中納言師時、法師の玉茎検知の事====== ====== 第6話(巻1・第6話) 中納言師時、法師の玉茎検知の事======
  
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 **中納言師時、法師ノ玉茎検知の事** **中納言師時、法師ノ玉茎検知の事**
  
-これもいまはむかし、中納言師時といふ人おはしけり。+===== 校訂本文 =====
  
-その御もとに、ことのほかに色くろき墨染の衣のみじかきに、不動袈裟と[をヲケシテとトセリ]いふけさかけて、木練子の念珠の大きなるくりさげたる、聖法師入きてたてり。中納言「あれはなにする僧ぞ」と、尋らるるに、ことのほかにこゑをあはれげになして「かりの世はかなく候を、しのびがたくて、無始よりこのかた、生死に流転するは、せんずる所煩悩にひかへられて、今にかくてうき世を出やらぬにこそ。是を無益なりと思とりて、煩悩を切すてて、ひとへにこのたび生死のさかひを出なんと、思とりたる聖人に候」といふ。+[[uji005|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺物語』TOP]] [[uji007|NEXT>>]]
  
-中納言「さて、『煩悩をきりすつる』かに」と問へば「く、これをらんぜよ」と、いひて、衣のまへをかきあげてみすれば、誠まっめやかのくてばかり。+これも今は昔、中納言師時((源師時))といふ人しけり。そのことのほかに色黒き墨染の衣のかきに、不動袈裟といふ袈裟けて、木練子(もくれんじ)念珠の大き繰り下たる聖法師、入来て立てり。
  
-ふしぎの事哉」と、み給程に、しもるふろのおぼえて「人やあ」とよび給侍二三人いきたり中納言「その法師ひきは、の給へば、まのして、あみだ仏申て「くとく、いかもし給へ」といひてあはれげなるほけしきして、足うちろげて、をろねぶりたるを、中納言「引[のきてト有ルヲ消ス]ひろげよ」と、のたまへば、二三人りて引ろげさして、小侍十二三ばりなるがあるをめしいでて「あの法しのまたのうへを、てをひろげてあげおろしさすれ」と、の給へば、そのままに、ふくらかなる手して、あげおろしさする+中納言、あれ何する僧ぞ」と、尋ねらるるに、ことのほかに声をあはれげなして、「仮の世、はかなく候ふを、しのびがたく無始(むし)よりこかた、生死流転すせんずる所、煩悩にひかられて今にかくて憂き世を出やらぬにこそを無益なりて、煩悩切り捨てて、に、『この度(たび)生死の境(さひ)出でなん』と思りたる聖人に候ふ」と言ふ。中納言さて、『煩悩切り捨つる』とは、いかに」とへば、「くは、これを御覧ぜ」と言ひて、前をき上げてすれば、まことにめやのはて、髭(ひげ)ばかり
  
-とばかり程に、この聖、まのしをして「いまはさおはせ」と、いひけるを、中納言「になりにたり。たださすれ。それそれ」と、ければ聖「あしく候。いまはさ」といふを、あやにくにさすりふせける程に、毛中より松茸のおほきやかなる物の、ふらふらといできて、腹にはすはとうちつけ《た》り+「こは、不思議の事な」と見給ふほどに、下(しも)に下が袋の、こほかに思えて、「人やある」と呼び給へば、侍、二・三人出で来たり。中納言、「その法師、引きはれ」とのたまへば、聖、まのしをして、阿弥陀仏申しくとく、いかにもし給へ」と言て、あはれげなる顔・気色(しき)して、足をうち広げて、おろねぶりたるを、中納言足を引き広」とのたまへば二・三人寄て、引き広げ、さて、小侍の十二・三ばかりなるがるを召出でて、の法師の股の上を、手を広げて上げ下しさすれ」とたまへばままに、ふかなる手して、上げ下しさ
  
-中納言じめて、そこらひたる物どももろこゑにわらふ。聖も、手をうちて、ふしまろびわらひけり。+とばかりあるほどに、この聖、まのしをして、「今はさておはせ」と言ひけるを、中納言、「良げになりにたり。たださすれ。それそれ」とありければ、聖、「さま悪しく候ふ。今」と言ふをあやくにさすり、ふせけるほに、毛の中より、松茸の大きやかなる物らふらと出で来て、腹にすはすはと打ち付り。
  
-はやう、まめやか物を、したのふくろへひねりいれてそくいにて毛をとりつけてさりなくして人をはかりて物をこはんとしたりけるなり+中納言を始めて、そこらに集ひたる者ども、もろ声に笑ふ。聖も手を打ちて、伏しまろび笑ひけり。 
 + 
 +はやう、まめやか物を、下の袋へひねり入れて、続飯(そくい)にて毛を取付けて、さりげなくして、人を謀(はか)りて、物を乞はんとしたりけるなり。狂惑法師にてありける。 
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 +[[uji005|<<PREV]] [[index.html|『宇治拾遺物語』TOP]] [[uji007|NEXT>>]] 
 + 
 +===== 翻刻 ===== 
 + 
 +  これもいまはむかし中納言師時とい人おはしけりその御もとに 
 +  ことのほかに色ろき墨染の衣のみしかきに不動袈裟と 
 +  いふけさかけて木練子の念珠の大きなるくりさけたる聖法師 
 +  入きてたてり中納言あれはなにする僧そと尋らるるにことのほかに 
 +  こゑをあはれけになしてかりの世はかなく候をしのひかたくて 
 +  無始よりこのかた生死に流転するはせんする所煩悩にひかへられ 
 +  て今にかくてうき世を出やらぬにこそ是を無益なりと思とりて 
 +  煩悩を切すててひとへにこのたひ生死のさかひを出なんと思とり 
 +  たる聖人に候といふ中納言さて煩悩をきりすつるとはいかにと問へはくは/10ウy24 
 + 
 +  これを御らんせよといひて衣のまへをかきあけてみすれは誠 
 +  にまめやかのはなくてひけはかりありこはふしきの事哉とみ給程に 
 +  しもにさかりたるふくろの事の外におほえて人やあるとよひ 
 +  給へは侍二三人いてきたり中納言その法師ひきはれとの給へは 
 +  ひしりまのしをしてあみた仏申てとくとくいかにもし給へといひて 
 +  あはれけなるかほけしきして足をうちひろけてをろねふり 
 +  たるを中納言足を引ひろけよとのたまへは二三人よりて引 
 +  ひろけさて小侍の十二三はかりなるかあるをめしいててあの法し 
 +  のまたのうへをてをひろけてあけおろしさすれとの給へはそ 
 +  のままにふくらかなる手してあけおろしさするとはかりある程 
 +  にこの聖まのしをしていまはさておはせといひけるを中納言 
 +  よけになりにたりたたさすれそれそれとありけれは聖さまあしく候 
 +  いまはさてといふをあやにくにさすりふせける程に毛の中より松茸/11オy25 
 + 
 +  のおほきやかなる物のふらふらといてきて腹にすはすはとうちつけ《た》り 
 +  中納言をはしめてそこらにつとひたる物とももろこゑにわらふ聖も 
 +  手をうちてふしまろひわらひけりはやうまめやか物をしたのふく 
 +  ろへひねりいれてそくいにて毛をとりつけてさりなくして人 
 +  をはかりて物をこはんとしたりけるなり狂惑の法師にてありける/11ウy26
  
-狂惑の法師にてありける。 
text/yomeiuji/uji006.1396860547.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa