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text:uchigiki:uchigiki09 [2021/10/18 00:43] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:uchigiki:uchigiki09 [2021/10/18 00:44] Satoshi Nakagawa
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 広き野の、玄(はる)かに遠きを往く。道遠くして、日暮れぬ。留るべき所無ければ、たどるたどる足に任せて往く間、多くの火灯したる物、四・五百人会ひぬ。 広き野の、玄(はる)かに遠きを往く。道遠くして、日暮れぬ。留るべき所無ければ、たどるたどる足に任せて往く間、多くの火灯したる物、四・五百人会ひぬ。
  
-「人に会ひぬ」と思ひて、悦びをなして、寄りて見れば、えもいはず怖しげなる鬼どもの行くなりけり。すきやうもなうて、心経((般若心経))を音をささげて読むほどに、この音を聞きて、鬼、十方に逃げ散り失せにけり。この心経は、三蔵の、天竺より渡る間、道にて伝へ奉る所の経なり。+「人に会ひぬ」と思ひて、悦びをなして、寄りて見れば、えもいはず怖しげなる鬼どもの行くなりけり。すきやうもなうて、心経((般若心経))を音をささげて読むほどに、この音を聞きて、鬼、十方に逃げ散り失せにけり。この心経は、三蔵の、天竺より渡る間、道にて伝へ奉る所の経なり。
  
 この伝へ奉れる様は、山ふところを過ぎ往く間(あひだ)、人、はるかに絶えたる所あり。そこを過ぎ往くほどに、えもいはず嗅(くさ)き香す。やうやう寄りて見れば、草枯れ例ならぬ所あり。鳥獣(とりけだもの)だに見ず。嗅さの耐へがたければ、鼻をふたぎて、あやしさに、あながちに寄りて見れば、一人の死人あり。 この伝へ奉れる様は、山ふところを過ぎ往く間(あひだ)、人、はるかに絶えたる所あり。そこを過ぎ往くほどに、えもいはず嗅(くさ)き香す。やうやう寄りて見れば、草枯れ例ならぬ所あり。鳥獣(とりけだもの)だに見ず。嗅さの耐へがたければ、鼻をふたぎて、あやしさに、あながちに寄りて見れば、一人の死人あり。
text/uchigiki/uchigiki09.txt · 最終更新: 2021/10/18 00:45 by Satoshi Nakagawa