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text:uchigiki:uchigiki06 [2018/04/28 19:09] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:uchigiki:uchigiki06 [2018/04/28 19:12] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 この鷹養の翁、「聖人、ここに住み給はば、おのれは守り奉る身とあるべし」と言へば、大師、鷹養の((「鷹養の」は、底本「の」虫損。文脈により補う。))翁に、「そこは誰(たれ)とか申す」と問ひ給へば、「丹生(にふ)の明神となむ((「なむ」底本「な」破損。文脈により補う。))申す」と言ひて、二人ながら、かい消つやうに失す。 この鷹養の翁、「聖人、ここに住み給はば、おのれは守り奉る身とあるべし」と言へば、大師、鷹養の((「鷹養の」は、底本「の」虫損。文脈により補う。))翁に、「そこは誰(たれ)とか申す」と問ひ給へば、「丹生(にふ)の明神となむ((「なむ」底本「な」破損。文脈により補う。))申す」と言ひて、二人ながら、かい消つやうに失す。
  
-大師、帰りて弟子ども具して、寺を造り、定の所も造りて、窟(ほら)を開きつつ、御髪を剃り、御装を着せかへ奉りなどしける。絶□□る((底本、二字程度虫損。))こともせで、般若僧正(([[:text:k_konjaku:k_konjaku11-25|『今昔物語集』1125]]によると、「般若寺の観賢僧正」))の宗長者にておはしける折、この大師には曽孫(ひひご)弟子になむ当り給ひける、かやうに参り給ひて、この窟(ほら)を開け給ひたりければ、霧の立ちて、つつ闇(やみ)にて、物も見えざりければ、しばしばかりありて、霧の居るを見る。御装の朽ちたりけるに、風の入りて吹きければ、塵(ちり)になりて吹き立てられけるが、霧とは見るなりけり。+大師、帰りて弟子ども具して、寺を造り、定の所も造りて、窟(ほら)を開きつつ、御髪を剃り、御装を着せかへ奉りなどしける。絶□□る((底本、二字程度虫損。))こともせで、般若僧正(([[:text:k_konjaku:k_konjaku11-25|『今昔物語集』11-25]]によると、「般若寺の観賢僧正」))の宗長者にておはしける折、この大師には曽孫(ひひご)弟子になむ当り給ひける、かやうに参り給ひて、この窟(ほら)を開け給ひたりければ、霧の立ちて、つつ闇(やみ)にて、物も見えざりければ、しばしばかりありて、霧の居るを見る。御装の朽ちたりけるに、風の入りて吹きければ、塵(ちり)になりて吹き立てられけるが、霧とは見るなりけり。
  
 □り((□は漢字のように見えるが、判読できず。「塵り」か「霧り」と考えられるが、いずれの字形でもない。))、静まりて後に、大師は見え給ひける。御髪は一尺ばかり生ひておはしければ、水沐浄衣を着□む。御髪は新かふ剃りして、剃り奉り給ひける。水精念珠の朽ちて絶えにければ、御前に散りたりけるを、取り聚(あつ)めて、緒(を)うるわしうすげて、御手に繋け奉り給へりけり。御装なむいみじく浄くしまうけて着奉り給ひて、窟掘りふたぎ給ふとてなむ、今始めて別れむやうに、不覚に泣き給ひける。 □り((□は漢字のように見えるが、判読できず。「塵り」か「霧り」と考えられるが、いずれの字形でもない。))、静まりて後に、大師は見え給ひける。御髪は一尺ばかり生ひておはしければ、水沐浄衣を着□む。御髪は新かふ剃りして、剃り奉り給ひける。水精念珠の朽ちて絶えにければ、御前に散りたりけるを、取り聚(あつ)めて、緒(を)うるわしうすげて、御手に繋け奉り給へりけり。御装なむいみじく浄くしまうけて着奉り給ひて、窟掘りふたぎ給ふとてなむ、今始めて別れむやうに、不覚に泣き給ひける。
text/uchigiki/uchigiki06.txt · 最終更新: 2018/05/19 16:21 by Satoshi Nakagawa