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徒然草
第119段 鎌倉の海に鰹といふ魚はかの境には双なきものにて・・・
校訂本文
鎌倉の海に、鰹(かつを)といふ魚は、かの境(さかひ)には、双(さう)なきものにて、このごろもてなすものなり。
それも、鎌倉の年寄りの申し侍りしは、「この魚、おのれら若かりし世までは、はかばかしき人の前へ出づること侍らざりき。頭(かしら)は下部(しもべ)も食はず。切り捨て侍りしものなり」と申しき。
かやうのものも、世の末になれば、上(かみ)ざままでも入りたつわざにこそ侍れ。
翻刻
鎌倉の海にかつをと云魚は。彼さかひには さうなきものにて。此比もてなすもの也。/w1-86l
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0086.jpg
それも鎌倉の年よりの申侍しは。此 魚をのれらわかかりし世までは。はか ばかしき人の前へ出る事侍らざりき。 頭は下部もくはず。きりてすて侍しも の也と申き。かやうの物も。世の末になれば。 上さままでも入たつわざにこそ侍れ/w1-87r
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0087.jpg
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