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現在位置: やたがらすナビ » やたナビTEXT » 烏丸光広本『徒然草』：兼好法師 » 第98段　尊き聖の言ひ置けることを書き付けて一言芳談とかや名付けたる・・・
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目次

徒然草

第98段　尊き聖の言ひ置けることを書き付けて一言芳談とかや名付けたる・・・

校訂本文

尊き聖(ひじり)の言ひ置けることを書き付けて、一言芳談とかや名付けたる草子を見侍りしに、心にあひて思えしことども。

  • 「しやせまし、せずやあらまし」と思ふことは、おほやうは、せぬはよき也。1)。
  • 後世を思はん者は、糂汰瓶(じんだがめ)2)一も持つまじきことなり3)。持経・本尊に至るまで、良き物を持つ、よしなきことなり4)。
  • 遁世者は、なきにことかけぬやうをはからひて過ぐる、最上のやうにてあるなり5)。
  • 上臈は下臈になり、智者は愚者になり、徳人は貧になり、能ある人は無能になるべきなり6)。
  • 仏道を願ふといふは、別のことなし。暇(いとま)ある身になりて、世のことを心にかけぬを第一の道とす7)。

このほかもありしことども、覚えず。

翻刻

たうときひじりの。云置ける事を書付
て。一言芳談とかやなづけたる草子を
見侍しに。心にあひて覚えし事ども
一　しやせまし。せずやあらましと
　　思ふ事は。おほやうは。せぬはよき也
一　後世を思はん者は。糂汰瓶一ももつ
　　まじきこと也。持経本尊にいたる
　　まで。よき物をもつよしなき事也
一　遁世者はなきにことかけぬやうをは／w1-72r
　　からひて過る。最上のやうにて有也
一　上臈は下臈になり。智者は愚者
　　になり。徳人は貧に成。能ある人は
　　無能になるべき也
一　仏道をねがふといふは。別の事
　　なし。いとまある身になりて。世の
　　事を心にかけぬを第一の道とす
　　此外も有し事どもおぼえず／w1-72l

http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0072.jpg

1)
明禅の言葉『一言芳談抄』22参照。
2)
糂粏瓶。糠味噌を入れる瓶。
3)
俊乗房重源の言葉。『一言芳談抄』67参照。
4)
解脱上人貞慶の言葉。『一言芳談抄』92参照。
5)
敬仏房の言葉。『一言芳談抄』41参照。
6)
顕性房の言葉。『一言芳談抄』59参照。
7)
行仙房の言葉。『一言芳談抄』49参照。
text/turezure/k_tsurezure098.txt.txt · 最終更新: 2023/12/23 02:01 by Satoshi Nakagawa