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徒然草
第71段 名を聞くよりやがて面影は推し量らるる心地するを・・・
校訂本文
名を聞くより、やがて面影は推し量らるる心地するを、見る時は、またかねて思ひつるままの顔したる人こそなけれ。昔物語を聞きても、「このごろの人の家の、そこほどにてぞありけん」と思えて、人も今見る人の中に思ひよそへらるるは、誰もかく思ゆるにや。
また、いかなる折ぞ、ただ今、人の言ふことも、目に見ゆるものも、わが心の内も、「かかることのいつぞやありしか」と思えて、いつとは思ひ出でねども、まさしくありし心地のするは、わればかりかく思ふにや。
翻刻
名を聞よりやがて面影はをしはからるる 心ちするを。見る時は。又かねて思ひつるまま の顔したる人こそなけれ。昔物がたり をききても。此比の人の家のそこほどに てぞありけんと覚て。人も今見る人の中 に思ひよそへらるるは。誰もかく覚る/w1-54l
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0054.jpg
にや。又如何なるおりぞ。ただいま人の云 事も。目にみゆる物も。わが心のうちも。 かかる事のいつぞや有しかとおぼえ て。いつとはおもひ出ねどもまさしく有 し心ちのするは。我ばかりかく思ふにや/w1-55r
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0055.jpg
text/turezure/k_tsurezure071.txt.txt · 最終更新: 2018/07/16 22:38 by 127.0.0.1