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徒然草
第69段 書写の上人は法華読誦の功積もりて六根浄にかなへる人なりけり・・・
校訂本文
書写の上人1)は、法華読誦の功積もりて、六根浄にかなへる人なりけり。
旅の仮屋(かりや)に立ち入られけるに、豆の殻(から)を焚きて、豆を煮ける音の、つぶつぶと鳴るを聞き給ひければ、「踈(うと)からぬおのれらしも、恨めしく、われをば煮て、からき目を見するものかな」と言ひけり。
焚かるる豆殻(まめがら)の、はらはらと鳴る音は、「わが心よりすることかは。焼かるるは、いかばかり堪(た)へがたけれども、力なきことなり。かくな恨み給ひそ」とぞ聞こえける。
翻刻
書写の上人は。法華読誦の功つもり て。六根浄にかなへる人也けり。旅のかり やに立いられけるに。豆のからをたきて 豆を煮ける音の。つぶつぶとなるを聞 給けれは。うとからぬをのれらし も。うらめしく。我をば煮てからきめを/w1-53l
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0053.jpg
見する物哉といひけり。たかるるまめ がらの。はらはらとなるをとは。我心よりす ることかは。やかるるはいかばかり堪がたけれ ども。力なき事也。かくな恨給そとぞ きこえける。/w1-54r
http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/he10/he10_00934/he10_00934_0001/he10_00934_0001_p0054.jpg
1)
性空
text/turezure/k_tsurezure069.txt.txt · 最終更新: 2018/07/15 19:23 by 127.0.0.1