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-すでに九献(くこん)始まりなどして、こなたに女房、次第に出で、心々の楽器(がくき)前に置き、思ひ思ひの褥(しとね)など、若菜の巻にや、記し文(ぶみ)のままに定め置かれて、時なりて、主(あるじ)の院((後深草院))は六条院((光源氏))に代はり、新院((亀山院))は大将((夕霧))に代はり、殿の中納言中将((鷹司兼忠))、洞院の三位中将にや、笛・篳篥(ひちりき)に階下へ召さるべきとて、まづ女房の座、みなしたためて並び居て、あなた裏にて御酒盛りありて、半ばになりて、こなたへ入らせ給ふべきにてある所へ、兵部卿((四条隆親))参りて、女房の座いかに」とて見らるるが、「このやう悪(わろ)し。まねばるる女三宮、文台(ぶんだい)の御前なり。今まねぶ人の、これは叔母なり。あれは姪(めい)なり。上に居るべき人なり。隆親、故大納言には上首(じやうしゆ)なりき。何事に下に居るべきぞ((「べきぞ」は底本「人きそ」。))。居直れ、居直れ」と声高(こゑだか)に言ひければ、善勝寺((四条隆顕))・西園寺((西園寺実兼))参りて、「これは別勅にて候ふものを」と言へども、「何とてあれ、さるべきことかは」と言はるる上は、一旦こそあれ、さのみ言ふ人もなければ、御前はあなたに渡らせ給ふに、誰か告げ参らせんもせんなければ、座を下(しも)へ降ろされぬ。出だし車のこと(([[towazu2-08|巻2-8]]参照。))、今さら思ひ出だされて、いと悲し。+すでに九献(くこん)始まりなどして、こなたに女房、次第に出で、心々の楽器(がくき)前に置き、思ひ思ひの褥(しとね)など、若菜の巻にや、記し文(ぶみ)のままに定め置かれて、時なりて、主(あるじ)の院((後深草院))は六条院((光源氏))に代はり、新院((亀山院))は大将((夕霧))に代はり、殿の中納言中将((鷹司兼忠))、洞院の三位中将にや、笛・篳篥(ひちりき)に階下へ召さるべきとて、まづ女房の座、みなしたためて並び居て、あなた裏にて御酒盛りありて、半ばになりて、こなたへ入らせ給ふべきにてある所へ、兵部卿((四条隆親))参りて、女房の座いかに」とて見らるるが、「このやう悪(わろ)し。まねばるる女三宮、文台(ぶんだい)の御前なり。今まねぶ人の、これは叔母なり。あれは姪(めい)なり。上に居るべき人なり。隆親、故大納言には上首(じやうしゆ)なりき。何事に下に居るべきぞ((「べきぞ」は底本「人きそ」。))。居直れ、居直れ」と声高(こゑだか)に言ひければ、善勝寺((四条隆顕))・西園寺((西園寺実兼))参りて、「これは別勅にて候ふものを」と言へども、「何とてあれ、さるべきことかは」と言はるる上は、一旦こそあれ、さのみ言ふ人もなければ、御前はあなたに渡らせ給ふに、誰か告げ参らせんもせんなければ、座を下(しも)へ降ろされぬ。出だし車のこと、今さら思ひ出だされて、いと悲し。
  
 姪・叔母には、なじか依るべき。あやしの者の腹に宿る人も多かり。それも、叔母は祖母(むば)はとて、捧げ置くべきか。こは何事ぞ。すべて、すさまじかりつることなり。 姪・叔母には、なじか依るべき。あやしの者の腹に宿る人も多かり。それも、叔母は祖母(むば)はとて、捧げ置くべきか。こは何事ぞ。すべて、すさまじかりつることなり。
  
-「これほど面目なからむことにまじろひて、せんなし」と思ひて、この座を立つ。局へすべりて、「御尋ねあらば、消息(しやうそく)を参らせよ」と言ひ置きて、小林といふは御姆(はは)が母、宣陽門院((後白河院皇女覲子内親王))に伊予殿といひける女房、おくれ参らせて、さま変へて、即成院(そくやうゐん)の御墓近く候ふ所へ尋ね行く。+「これほど面目なからむことにまじろひて、せんなし」と思ひて、この座を立つ。局へすべりて、「御尋ねあらば、消息(しやうそく)を参らせよ」と言ひ置きて、小林といふは御姆(はは)が母、宣陽門院((後白河院皇女覲子内親王))に伊予殿といひける女房、おくれ参らせて、さま変へて、即成院(そくやうゐん)の御墓近く候ふ所へ尋ね行く。
  
 参らせ置く消息に、白き薄様に琵琶の一の緒を二つに切りて包みて、 参らせ置く消息に、白き薄様に琵琶の一の緒を二つに切りて包みて、
text/towazu/towazu2-22.1561213556.txt.gz · 最終更新: 2019/06/22 23:25 by Satoshi Nakagawa