ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:towazu:towazu2-07

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

text:towazu:towazu2-07 [2019/05/19 12:54] – 作成 Satoshi Nakagawatext:towazu:towazu2-07 [2019/07/15 18:05] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
行 8: 行 8:
 さるほどに、両院((後深草院と亀山院))、御仲心良からぬこと、悪しく東ざま((鎌倉幕府))に思ひ参らせたるといふこと聞こえて、この御所へ新院((亀山院。底本、「せんりんし殿(禅林寺殿)」と傍注。))御幸(ごかう)あるべしと申さる。 さるほどに、両院((後深草院と亀山院))、御仲心良からぬこと、悪しく東ざま((鎌倉幕府))に思ひ参らせたるといふこと聞こえて、この御所へ新院((亀山院。底本、「せんりんし殿(禅林寺殿)」と傍注。))御幸(ごかう)あるべしと申さる。
  
-かかり御覧ぜらるべしとて、御鞠あるべしとてあれば、「いかで、いかなるべき式ぞ」と、近衛の大殿((鷹司兼平))へ申さる。「いたくこと過ぎぬほどに、九献(くこん)御鞠の中に御装束直さるる折、御柿ひたし参ることあり。女房して参らせらるべし」と申さる。「女房は誰にてか」と御沙汰あるに、「御年ごろなり。さるべき人柄なれば」とて、この役を承る。樺桜(かばざくら)七つ・裏山吹(うらやまぶき)の表着(うはぎ)・青色唐衣((「唐衣」は底本「から花」))・紅(くれなゐ)の打衣(うちぎぬ)・生絹(すずし)の袴にてあり。浮き織物の紅梅の匂ひの三小袖、唐綾の二小袖なり。+かかり御覧ぜらるべしとて、御鞠あるべしとてあれば、「いかで、いかなるべき式ぞ」と、近衛の大殿((鷹司兼平))へ申さる。「いたくこと過ぎぬほどに、九献(くこん)御鞠の中に御装束直さるる折、御柿ひたし参ることあり。女房して参らせらるべし」と申さる。「女房は誰にてか」と御沙汰あるに、「御年ごろなり。さるべき人柄なれば」とて、この役を承る。樺桜(かばざくら)七つ・裏山吹(うらやまぶき)の表着(うはぎ)・青色唐衣((「唐衣」は底本「から花」))・紅(くれなゐ)の打衣(うちぎぬ)・生絹(すずし)の袴にてあり。浮き織物の紅梅の匂ひの三小袖、唐綾の二小袖なり。
  
 御幸なりぬるに、御座を対座(たいざ)にまうけたりしを、新院御覧ぜられて、「前院((後嵯峨院))の御時、定めおかれにしに、御座のまうけやう悪(わろ)し」とて、長押の下へ下ろさるる所に、主(あるじ)の院((後深草院))、出でさせ給ひて、「朱雀院の行幸には、主の座を対座にこそなされしに、今日の出御には御座を下ろさるる、異様(ことやう)に侍り」と申されしこそ、「優(いう)に聞こゆ」など、人々申し侍りしか。 御幸なりぬるに、御座を対座(たいざ)にまうけたりしを、新院御覧ぜられて、「前院((後嵯峨院))の御時、定めおかれにしに、御座のまうけやう悪(わろ)し」とて、長押の下へ下ろさるる所に、主(あるじ)の院((後深草院))、出でさせ給ひて、「朱雀院の行幸には、主の座を対座にこそなされしに、今日の出御には御座を下ろさるる、異様(ことやう)に侍り」と申されしこそ、「優(いう)に聞こゆ」など、人々申し侍りしか。
text/towazu/towazu2-07.1558238041.txt.gz · 最終更新: 2019/05/19 12:54 by Satoshi Nakagawa