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text:shaseki:ko_shaseki06b-14 [2019/01/20 18:20] – 作成 Satoshi Nakagawa | text:shaseki:ko_shaseki06b-14 [2020/06/20 23:37] (現在) – Satoshi Nakagawa | ||
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===== 校訂本文 ===== | ===== 校訂本文 ===== | ||
- | 鎌倉の故相州禅門((北条時頼))の中に、祇候(しこう)の女房ありけり。腹あしく、たてだてしかりけるが、ある時、成長の子息の同じくつかまつりけるを、いささかのことによりて、腹を立てて、打たんとしけるほどに、物にけつまづきて、いたく倒(たふ)れて、いよいよ腹をすゑかねて、禅門に、「子息それがし、わらはを打ちて侍り((「打ちて侍り」は底本「打ト侍」。諸本により訂正。))と訴へ申しければ、「不思議のことなり」とて、かの俗を召して、「まことに母を打ちたるにや。母、しかじか申すなり」と問はる、「まことに打ちて侍り」と申す。禅門、「かへすがへす奇怪なり。不当なり」と叱りて、所領を召し、流罪に定めにけり。 | + | 鎌倉の故相州禅門((北条時頼))の中に、祗候(しこう)の女房ありけり。腹あしく、たてだてしかりけるが、ある時、成長の子息の同じくつかまつりけるを、いささかのことによりて、腹を立てて、打たんとしけるほどに、物にけつまづきて、いたく倒(たふ)れて、いよいよ腹をすゑかねて、禅門に、「子息それがし、わらはを打ちて侍り((「打ちて侍り」は底本「打ト侍」。諸本により訂正。))と訴へ申しければ、「不思議のことなり」とて、かの俗を召して、「まことに母を打ちたるにや。母、しかじか申すなり」と問はる、「まことに打ちて侍り」と申す。禅門、「かへすがへす奇怪なり。不当なり」と叱りて、所領を召し、流罪に定めにけり。 |
こと苦々しくなりける上、腹もやうやくゐて、あさましく思えければ、母、また禅門に申しけるは、「腹の立ちのままに、『この俗、われを打ちたり』と申し上げて侍りつれども、まことは、さること候はず。おとなげなく、かれを打たんとして、倒れて侍りつるねたさにこそ、申し候ひつれ。まめやかに御勘当候はんことは、あさましく候ふ。許させ給へ」とて、けしからずうち泣き申しければ、「さらば召せ」とて、召して子細を尋ねらる。 | こと苦々しくなりける上、腹もやうやくゐて、あさましく思えければ、母、また禅門に申しけるは、「腹の立ちのままに、『この俗、われを打ちたり』と申し上げて侍りつれども、まことは、さること候はず。おとなげなく、かれを打たんとして、倒れて侍りつるねたさにこそ、申し候ひつれ。まめやかに御勘当候はんことは、あさましく候ふ。許させ給へ」とて、けしからずうち泣き申しければ、「さらば召せ」とて、召して子細を尋ねらる。 | ||
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母之為忠孝有人事 | 母之為忠孝有人事 | ||
- | 鎌倉ノ故相州禅門ノ中ニ祇候ノ女房有ケリ腹アシクタテ | + | 鎌倉ノ故相州禅門ノ中ニ祗候ノ女房有ケリ腹アシクタテ |
タテシカリケルカ或時成長ノ子息ノ同シクツカマツリケルヲイ | タテシカリケルカ或時成長ノ子息ノ同シクツカマツリケルヲイ | ||
ササカノ事ニヨリテ腹ヲ立テ打タントシケルホトニ物ニケツマツ | ササカノ事ニヨリテ腹ヲ立テ打タントシケルホトニ物ニケツマツ |
text/shaseki/ko_shaseki06b-14.1547976048.txt.gz · 最終更新: 2019/01/20 18:20 by Satoshi Nakagawa