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text:shaseki:ko_shaseki03a-01 [2018/09/06 21:56] – 作成 Satoshi Nakagawatext:shaseki:ko_shaseki03a-01 [2019/03/27 13:01] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 悉達太子((釈迦))、金輪の位を捨てて檀持山へ入り、車匿(しやのく)を王宮へ返し給ひし時、車匿、泣く泣く申さく、「深宮に長(ひと)となり、万人に仰がれましましき。かかる深山に、ただ一人は、いかでか住ませ給ふべき。仕へ奉るべし」と申ししかども、「生死の習ひ、独り生れ独り去る。中間(ちうげん)に何ぞ必ずしも人とともなはん。われ、無上道を得たらん時、一切衆生を伴とすべし」とて、王宮へ返し給ひき。はたして、三界の独尊となり、四生の群類を導き給ひき。 悉達太子((釈迦))、金輪の位を捨てて檀持山へ入り、車匿(しやのく)を王宮へ返し給ひし時、車匿、泣く泣く申さく、「深宮に長(ひと)となり、万人に仰がれましましき。かかる深山に、ただ一人は、いかでか住ませ給ふべき。仕へ奉るべし」と申ししかども、「生死の習ひ、独り生れ独り去る。中間(ちうげん)に何ぞ必ずしも人とともなはん。われ、無上道を得たらん時、一切衆生を伴とすべし」とて、王宮へ返し給ひき。はたして、三界の独尊となり、四生の群類を導き給ひき。
  
-まことに生老病死の国、衆苦充満の界、少しきの前後あれども、そひ果つべきにあらず。夢のごとくして死し去り、面々の業にまかせて品々の果を受けん時は、われも人を知らず、人もわれを知らず、山野の獣と生まれ、江海の鱗(ろくづ)となりなば、互ひに殺し食して、昔の情も恩も知るべからず。+まことに生老病死の国、衆苦充満の界、少しきの前後あれども、そひ果つべきにあらず。夢のごとくして死し去り、面々の業にまかせて品々の果を受けん時は、われも人を知らず、人もわれを知らず、山野の獣と生まれ、江海の鱗(ろくづ)となりなば、互ひに殺し食して、昔の情も恩も知るべからず。
  
 しかれば、真実(しんじち)の菩提心を発(おこ)し、父母妻子の情けを捨てて、山林閑静の居を占め、善友に近付き、正法(しやうぼふ)を聞き、真正に信解(しんげ)し、如説に修行して、生死を離れ、浄土に生じ、無生を証し、神通を得て、種々の方便をもつて、まづ有縁の父母妻子等を教化し、引導して、一仏浄土の快楽(けらく)を受け、無為自然の果報を得て、生老病死の苦もなく、愛別離苦の憂ひもなき、常住不退の無漏(むろ)の仏国に住して、常に十方の仏に仕へ、あまねく六趣の生を利せん時は、昔捨てて今会へることを思ひ続けて、かくこそ申つべけれ。「離れたればこそはなれね。離れずは離れなまし。かしこくぞ離れける。希有に離るらうに」。 しかれば、真実(しんじち)の菩提心を発(おこ)し、父母妻子の情けを捨てて、山林閑静の居を占め、善友に近付き、正法(しやうぼふ)を聞き、真正に信解(しんげ)し、如説に修行して、生死を離れ、浄土に生じ、無生を証し、神通を得て、種々の方便をもつて、まづ有縁の父母妻子等を教化し、引導して、一仏浄土の快楽(けらく)を受け、無為自然の果報を得て、生老病死の苦もなく、愛別離苦の憂ひもなき、常住不退の無漏(むろ)の仏国に住して、常に十方の仏に仕へ、あまねく六趣の生を利せん時は、昔捨てて今会へることを思ひ続けて、かくこそ申つべけれ。「離れたればこそはなれね。離れずは離れなまし。かしこくぞ離れける。希有に離るらうに」。
text/shaseki/ko_shaseki03a-01.txt · 最終更新: 2019/05/01 14:11 by Satoshi Nakagawa