全文検索:
- 1の56 同院年経世変りてのち秋の夕暮に階近く出でさせ給ひて・・・
- ho01-55|前話]]参照))、年経(へ)、世変りてのち、秋の夕暮に階(はし)近く出でさせ給ひて、前栽御覧ぜられけるに、いにしへを思ひ出でて、「三条殿に虫の鳴きしこそ」と仰せ出だされたりければ、人々静ま... ===== 翻刻 ===== 同院年ヘ世カハリテ後、秋ノ夕暮ニハシチカク出サセ 給テ、前栽御覧セラレケルニ、古ヘヲ思出テ、三条殿ニ虫 ノ鳴シコソト仰出サレタリケレハ、人々シツマリテ哀ニ
- 1の11 人の有様をもこれらにて心得べし・・・
- 、御仏事を行はれけり。こと果てて出づるほどに、長月十日あまりのころなりければ、秋風身にしみて、御前の前栽に((底本「前栽み」。諸本により訂正。))鳴く虫の声、弱りゆく気色なる折しも、斉信中将((藤原斉信))、蔵人頭にておはしけるが、「金谷に花酔地、花は春ごとに匂ひて主(あるじ)かへらず」と詠じたりければ、聞... メニ御 仏事ヲ被行ケリ事ハテテ出ホトニ、長月十日アマ リノ比ナリケレハ、秋風身ニシミテ御前ノ前栽ミナ ク虫ノ声ヨハリユク気色ナルオリシモ斉信中/k33 将蔵人頭ニテオハシケルカ金谷ニ花酔
- 3の5 ある所に女房あまた居て箏弾くに琴柱の走りて失せたるを・・・
- て、箏弾くに、琴柱(ことぢ)の走りて失せたるを、さるべき男もなければ、宿直人の見ゆるを呼びて、「かの前栽の中に、楓(かへで)の木、二股に、これほど、しかじか、切りて来(こ)」と細かに教へてやりつ。 「は... テ箏ヒクニ、コトチノハシリテ失 タルヲ、サルヘキ男モナケレハ、トノヰ人ノミユルヲヨヒテ、彼 前栽ノ中ニカヘテノ木二俣ニ是程シカシカキリテコト/k117 細ニ教テ遣リツ、ハカハカシキ事アラジト
- 8の8 業平中将の、高安へ通ひけるころ・・・
- つ白波たつた山、夜半(よは)にや君がひとりゆくらむ とながめける、優にやさしきためしなり。 男、前栽の中に隠れて、このことをうかがひ見つつ、外心失せにけりとなん。 女人をば、仏も、「内心如夜叉」と仰... 風吹ハオキツシラナミタツタ山、夜半ニヤ君ガ一人行クラム トナカメケル、優ニヤサシキタメシナリ、男前栽ノ中ニカ クレテ、此ノ事ヲウカカヒミツツ外心失ニケリトナン、女人 ヲハ仏モ内心如夜叉ト仰ラレ