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- 第17段 またこの男をかしきやうにて得たる女ありけり・・・
- がりて、月のおもしろかりける夜、かの女の家に行きて、「いつしか」と馬より下り走りて、庭を見入るれば、前栽(せんざい)のもとに、みな女ども交れり。 かかりければ、この男、をかしきやうに思ひて、歩み寄りてあれば、この女ども、うち騒ぎて、みな板敷に上りぬ。男は、「われに隠るべき人こそは」と思ひて、前栽の中に立ちやすらひけり。 かかりけるに、くそたち来けり。「わがもとに来るなめり」と、この男は見立て... そかに立てりける所にぞ、「などか、さてはものし給ふ。早う来や」と言ひたりければ、「今、参り来む。この前栽の、いとおもしろく、くまぐましき見るなり」と言ひてぞ立てりけるに、そこの法師のがり、間どもなく人やる
- 第19段 またこの男の家には前栽好みて作りければ・・・
- 平中物語 ====== 第19段 またこの男の家には前栽好みて作りければ・・・ ====== ===== 校訂本文 ===== また、この男の家には、前栽好みて作りければ、おもしろき菊など、いとあまたぞ植ゑたりける。間をうかがひて、月のいと明きに、女ども集り来て、前栽どもなど見て、花の中にいと高きにぞ付けて言ひける。 行き難(が)てにむべしも人はすだきけり花は
- 第34段 またこの男忍びたるものからはやむまと思はぬ人の・・・
- りければ、あやしがりて、さしのぞきたり。 見合はせて、「いかでかは、ここにかうは」と言へば、「この前栽(せんざい)の花の、目に見す見す移ろふ、見果てになむ参り来つる」とぞ言ひける。 その屋の前に、桜の
- 第2段 またこの男の懲りずまに言ひみ言はずみある人ぞありける・・・
- かうちつけにになひも知らぬわれに負ほする かう言ふあひだに、秋になりにけり。 「この男の家には、前栽(せんざい)など、いとおもしろう植ゑて、菊など咲きてあり」と聞きて、この女のもとより、「そのおもしろ
- 第25段 またこの男志賀へとて詣づるに逢坂の走り井に・・・
- しことなど、もろともに見ける人なれば、「げにあやし。人や言ひ損ひたらむ」などぞ言ひける。 この男、前栽(せんざい)を見て、口遊びに、 助くべき草木ならねどあはれとぞもの思ふ人の目には見えける な