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text:sesuisho:n_sesuisho2-030
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text:sesuisho:n_sesuisho2-030 [2021/07/20 12:20] (現在) – 作成 Satoshi Nakagawa
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 +[[index.html|醒睡笑]] 巻2 貴人の行跡
 +====== 10 大相国の御前に二徳かしこまりぬ・・・ ======
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 +===== 校訂本文 =====
 +[[n_sesuisho2-029|<<PREV]] [[index.html|『醒睡笑』TOP]] [[n_sesuisho2-031|NEXT>>]]
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 +大相国((豊臣秀吉))の御前に、二徳かしこまりぬ。「いかなれば、おのれはこのほど見えなんだぞ」と御諚(ごぢやう)ある。「されば、九世(くせ)の戸の文殊より、『参れ』といふ告げにより、参詣つかまつりたる」よし、申し上ぐる。「何と、文殊に会ふたか」と御尋ねあり。「なかなか、御目にかかつて御言伝(おことづて)がござある」。「何とあるぞ。言上せよ」とあれば、「二徳めに目かけてたもれ。とと様、かか様」と申ければ、そのまま落涙ありしとなり。
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 +かくてこそ、神は正直のかうべにやどらせ給はんずれ。((この行、底本一字下げで小書き。))
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 +ただ大人は、うかとしたる体(てい)にて、いろいろのことを言はせ聞き、その良きを行ひ、悪しきを捨て給はんが肝要なり。時の威(ゐ)に恐れ、たまたまも御気に入ることばかりこそ申さんずれ、国のため、人のために良き道は申さぬなり。「大臣重禄不拯諫、小臣畏罪不敢言、下情不上通、此患之大也(大臣は禄を重んじて諫めを拯(いた)さず、小臣は罪を畏れてあへて言はず、下の情上に通らず、これ患の大きなるなり)」と後漢書((『後漢書』陳忠伝))にあり。
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 +[[n_sesuisho2-029|<<PREV]] [[index.html|『醒睡笑』TOP]] [[n_sesuisho2-031|NEXT>>]]
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 +===== 翻刻 =====
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 +  一 大相国御前に二徳かしこまりぬいかなれは
 +    をのれは此ほと見えなんたそと御諚あるされは
 +    九世の戸の文殊より参れといふ告に
 +    より参詣仕たるよし申上るなにと文殊に
 +    あふたかと御尋あり中々御目にかかつて
 +    御言伝か御座あるなにとあるそ言上せよと
 +    あれは二徳めに目かけてたもれととさま
 +    かか様と申けれはそのまま落涙ありしと也
 +     かくてこそ神は正直のかうへにやとらせ給はんすれ/n2-19r
 +
 +    唯大人はうかとしたる体にて色々の事
 +    をいはせきき其よきを行あしきをすて給
 +    はんか肝要也時の威にをそれたまたまも
 +    御気に入事斗こそ申さんすれ国のため
 +    人のためによき道は申さぬなり大臣ハ重
 +    禄不拯諫小臣畏罪不敢言下情不上
 +    通此患之大也と后漢書にあり/n2-19l
  
text/sesuisho/n_sesuisho2-030.txt · 最終更新: 2021/07/20 12:20 by Satoshi Nakagawa