text:mumyosho:u_mumyosho043
目次
無名抄
第43話 上の句劣れる秀歌
校訂本文
かみの句をとれる秀歌
俊恵いはく、「歌は秀句を思ひ得たれども、末(すゑ)いひかなふることの難きなり。後徳大寺左府の御歌に、
なごの海の霞の間より眺むれば入る日を洗ふ沖つ白波
頼政卿の歌に
住吉の松の木間(こま)より眺むれば月落ちかかる淡路島山
この両首、ともに上の句思ふやうならぬ哥なり。『入る日を洗ふ』といひ、『月落ちかかる』などいへる、いみじき詞なれど、胸・腰の句をば、えいひかなへず。遺恨のことなり」。
翻刻
カミノ句ヲトレル秀哥 俊恵云哥は秀句をおもひゑたれともすゑいひ かなふることのかたきなり後徳大寺左府の御哥に/e36l
なこのうみのかすみのまよりなかむれは いる日をあらふおきつしらなみ 頼政卿の哥に すみよしの松のこまよりなかむれは 月をちかかるあはちしまやま 此両首ともにかみのくおもふやうならぬ哥也 いる日をあらふといひ月をちかかるなといへる いみしき詞なれとむねこしの句をはゑいひか なへす遺恨のことなり/e37r
text/mumyosho/u_mumyosho043.txt · 最終更新: 2014/09/23 20:43 by Satoshi Nakagawa