ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:mumyosho:u_mumyosho011

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
text:mumyosho:u_mumyosho011 [2014/09/13 18:16] – [第11話 せみのを川の事] Satoshi Nakagawatext:mumyosho:u_mumyosho011 [2020/03/07 01:44] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
行 10: 行 10:
   石川やせみのお川の清ければ月も流れを尋ねてぞすむ   石川やせみのお川の清ければ月も流れを尋ねてぞすむ
  
-((底本、ここに標題。))と詠みて侍りしを、判者にて、師光入道、「かかる川やはある」とて、負けになり侍りにき。思ふ所ありて詠みて侍しかど、かくなりにしかば、いぶかしく思え侍しほどに、「その度(たび)の判者、すべて心得ぬこと多かり」とて、また改めて顕昭法師に判ぜさせ侍りしとき、この歌の所に判していはく、「石川・せみのお川、いとも聞き及び侍らず。ただし、をかしく続けたり。かかる川などの侍るにや。所の者に尋ねて定むべし」とて、事を切らず。+((底本、ここに標題。))と詠みて侍りしを、判者にて、師光入道、「かかる川やはある」とて、負けになり侍りにき。思ふ所ありて詠みて侍しかど、かくなりにしかば、いぶかしく思え侍しほどに、「その度(たび)の判者、すべて心得ぬこと多かり」とて、また改めて顕昭法師に判ぜさせ侍りしとき、この歌の所に判していはく、「石川・せみのお川、いとも聞き及び侍らず。ただし、をかしく続けたり。かかる川などの侍るにや。所の者に尋ねて定むべし」とて、事を切らず。
  
 後に顕昭に会ひたりしとき、このこと語り出でて、「これは賀茂川の異名なり。当社の縁起に侍り」と申ししかば、驚きて、「かしこくぞおぢて難ぜず侍りける。さりとも、『顕昭等が聞き及ばぬ名所あらむやは』と思ひて、ややもせば難じつべく思え侍りしかど、誰が歌とは知らねど、歌ざまのよろしく見えしかば、所おきてさやうに申して侍りしなり。これすでに老ひの功なり」となむ申し侍りし。 後に顕昭に会ひたりしとき、このこと語り出でて、「これは賀茂川の異名なり。当社の縁起に侍り」と申ししかば、驚きて、「かしこくぞおぢて難ぜず侍りける。さりとも、『顕昭等が聞き及ばぬ名所あらむやは』と思ひて、ややもせば難じつべく思え侍りしかど、誰が歌とは知らねど、歌ざまのよろしく見えしかば、所おきてさやうに申して侍りしなり。これすでに老ひの功なり」となむ申し侍りし。
text/mumyosho/u_mumyosho011.1410599811.txt.gz · 最終更新: 2014/09/13 18:16 by Satoshi Nakagawa