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text:karakagami:m_karakagami3-01 [2023/01/09 18:18] – 作成 Satoshi Nakagawatext:karakagami:m_karakagami3-01 [2023/07/05 22:22] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 [[index.html|唐鏡]] 第三 漢高祖より景帝にいたる [[index.html|唐鏡]] 第三 漢高祖より景帝にいたる
-====== 1 漢 高祖() ======+====== 1 漢 高祖(1) ======
  
 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
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 劉媼、昔、大沢(たいたく)((底本表記「太沢」。))の陂(つつみ)に休み給ひしに、夢に神(しん)と会ふと見給ひて、孕(はら)み給ひぬ。さて、高祖を生み奉り。高祖、隆準(りうしゆん)にして竜顔(りうがん)あり。鬚髯(しゆぜん)うるはしくおはしましき。また、左の股に七十二の黒子(ははくそ)ありき。仁ありて人を愛し、酒を買ひ色をぞ好み給ひける。 劉媼、昔、大沢(たいたく)((底本表記「太沢」。))の陂(つつみ)に休み給ひしに、夢に神(しん)と会ふと見給ひて、孕(はら)み給ひぬ。さて、高祖を生み奉り。高祖、隆準(りうしゆん)にして竜顔(りうがん)あり。鬚髯(しゆぜん)うるはしくおはしましき。また、左の股に七十二の黒子(ははくそ)ありき。仁ありて人を愛し、酒を買ひ色をぞ好み給ひける。
  
-酒に酔(ゑ)ひて寝給ふに、常に竜怪のたくましけり。呂公(りよこう)といふ相人ありけり。「若かりし時は、里人を相すること多けれども、この高祖ほどの相はなかりき」と申して、かしづきて、持ちたりける女子(おむなご)を婚(あ)はせむとするに、呂公の妻のいはく、「常にこの娘を奇して、貴人に与へんと思ひて、沛(はい)の令(れい)などが申すをも聞かず、なんぞみだりにこの人に与ふべきや」と申すに、呂公がいはく、「これは児女子の知れらむところにはあらじ」とて、つひに高祖に奉りつ。呂后と申して、孝恵(かうけい)((底本「帝」と異本注記))・魯元((底本「ロゲ/クミ/グハン」と読み仮名及び注。))の御母はこれなり。+酒に酔(ゑ)ひて寝給ふに、常に竜怪のたくましけり。呂公(りよこう)といふ相人ありけり。「若かりし時は、里人を相すること多けれども、この高祖ほどの相はなかりき」と申して、かしづきて、持ちたりける女子(おむなご)を婚(あ)はせむとするに、呂公の妻のいはく、「常にこの娘を奇して、貴人に与へんと思ひて、沛(はい)の令(れい)などが申すをも聞かず、なんぞみだりにこの人に与ふべきや」と申すに、呂公がいはく、「これは児女子の知れらむところにはあらじ」とて、つひに高祖に奉りつ。呂后((呂雉))と申して、孝恵(かうけい)((恵帝。底本「帝」と異本注記))・魯元((魯元公主。底本「ロゲ/クミ/グハン」と読み仮名及び注。))の御母はこれなり。
  
 高祖、泗水(しすい)の亭の長となりて、竹皮(ちくひ)をもて冠(かぶり)にし給ひける。 高祖、泗水(しすい)の亭の長となりて、竹皮(ちくひ)をもて冠(かぶり)にし給ひける。
  
-高祖、夜更けて沢中(たくちう)を渡り給ふことありしに、ひとりの前行の者いはく、「前に大きなる蛇ありて、道にあたれり。願はくは帰りなん」と言ふ。高祖、酔(ゑ)ひて((底本「酔」に「ユイ」と読み仮名。))のたまはく、「壮士(さうし)((底本「コウシ」と読み仮名。))行く、何の恐しきことのあらむ」とて進みて、剣を抜きて、蛇を切給ひつ。蛇、二つとなりて、径(みち)ひらけぬれば、行きつつ酔ひて、なほ寝給へり。+高祖、夜更けて沢中(たくちう)を渡り給ふことありしに、ひとりの前行の者いはく、「前に大きなる蛇ありて、道にあたれり。願はくは帰りなん」と言ふ。高祖、酔(ゑ)ひて((底本「酔」に「ユイ」と読み仮名。))のたまはく、「壮士(さうし)((底本「コウシ」と読み仮名。))行く、何の恐しきことのあらむ」とて進みて、剣を抜きて、蛇を切給ひつ。蛇、二つとなりて、径(みち)ひらけぬれば、行きつつ酔ひて、なほ寝給へり。
  
 御供にさがりたる人、蛇の所に至るに、一つの老いたる嫗(うば)ありて、夜哭(やこく)しけるを、「など、かくは泣くぞ」と問ひければ、「人、わが子を殺せり」と言ふ。「などその子をば((「をば」は底本「ば」なし。底本の異本注記により補う。))殺されたるぞ」と問ふに、嫗のいはく、「わが子は白帝の子なり。化して蛇となりて、道にありつるを((「道にありつるを」は底本「道をありつるを」。内閣文庫本により訂正。))赤帝の子のために切られぬ」とぞ申しける。このよしを高祖に申しければ、御心に頼もしくぞ思(おぼ)しける。 御供にさがりたる人、蛇の所に至るに、一つの老いたる嫗(うば)ありて、夜哭(やこく)しけるを、「など、かくは泣くぞ」と問ひければ、「人、わが子を殺せり」と言ふ。「などその子をば((「をば」は底本「ば」なし。底本の異本注記により補う。))殺されたるぞ」と問ふに、嫗のいはく、「わが子は白帝の子なり。化して蛇となりて、道にありつるを((「道にありつるを」は底本「道をありつるを」。内閣文庫本により訂正。))赤帝の子のために切られぬ」とぞ申しける。このよしを高祖に申しければ、御心に頼もしくぞ思(おぼ)しける。
text/karakagami/m_karakagami3-01.1673255922.txt.gz · 最終更新: 2023/01/09 18:18 by Satoshi Nakagawa