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text:kara:m_kara021 [2014/12/02 23:51] – 作成 Satoshi Nakagawatext:kara:m_kara021 [2014/12/02 23:52] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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 声を聞きて、「我かかる病に煩ひて、年久しくなりぬ。今初めて人の笑ひ嘲るべきにあらず。これひとへに、君の色を好みて、つかはれ人を軽しめ給ふゆへなり。もし我を捨てぬ御心ならば、笑ひつる人を失なひ給ふべし」と強ひて主に愁ふるに、「おのれが愁へをやすむべし」とは言ひながら、さすがにあるべくもなきことなれば、その後月日を経るに、三千人のつかはれ人、やうやう数少なくなりゆくを、「我、いささかも過つことなし。しかれども、恨みをいだきて遁れ去るも心知り難し」と、おのおのに言ひ下せり。 声を聞きて、「我かかる病に煩ひて、年久しくなりぬ。今初めて人の笑ひ嘲るべきにあらず。これひとへに、君の色を好みて、つかはれ人を軽しめ給ふゆへなり。もし我を捨てぬ御心ならば、笑ひつる人を失なひ給ふべし」と強ひて主に愁ふるに、「おのれが愁へをやすむべし」とは言ひながら、さすがにあるべくもなきことなれば、その後月日を経るに、三千人のつかはれ人、やうやう数少なくなりゆくを、「我、いささかも過つことなし。しかれども、恨みをいだきて遁れ去るも心知り難し」と、おのおのに言ひ下せり。
  
-この中に、殊(こと)に詳(つまび)らかなる者、申していはく、「君、このかたは人をすかし給へり。これ我らが身の上にあらずや。もし、かくのごときならば、なにを頼もしと思ひてか、身を捨て心を励まして、君に仕へ奉るべき」と言へり。主、これを聞きて、浅からぬ年ごろのむつまじさをもかへりみず、この女をたちまちに殺してけり。片輪人(かたはびと)これを見て心ゆきぬ。また、その外のつかはれ人ども、元のごとく帰りにけり。+この中に、殊(こと)に詳(つまび)らかなる者、申していはく、「君、この片輪人をすかし給へり。これ我らが身の上にあらずや。もし、かくのごときならば、なにを頼もしと思ひてか、身を捨て心を励まして、君に仕へ奉るべき」と言へり。主、これを聞きて、浅からぬ年ごろのむつまじさをもかへりみず、この女をたちまちに殺してけり。片輪人(かたはびと)これを見て心ゆきぬ。また、その外のつかはれ人ども、元のごとく帰りにけり。
  
   思ひきやただうち笑みし言の葉の死出の山路に散らんものとは   思ひきやただうち笑みし言の葉の死出の山路に散らんものとは
text/kara/m_kara021.1417531897.txt.gz · 最終更新: 2014/12/02 23:51 by Satoshi Nakagawa