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text:kara:m_kara021 [2014/12/02 23:51] – 作成 Satoshi Nakagawatext:kara:m_kara021 [2025/11/27 16:37] (現在) Satoshi Nakagawa
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 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
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 昔、平原君((底本「平元君」。諸本も同じだが、出典により訂正。))と聞こゆる人、三千人のつかはれ人を集めて、これを((底本「たれを」。諸本により訂正))あはれみ、ねんころに思ひけるに、この主(あるじ)の思ひ妻、高き楼の上に居て四方(よも)を見渡しけるに、足萎えたる者の、這ふ這ふゐざりつつ水を汲みに行きけり。左右の膝よりも、頭(かしら)なほ引き入りて、人の姿に似ず。世にをかしげなりければ、この女、思ひわくこともなくて、うち笑ひてけり。 昔、平原君((底本「平元君」。諸本も同じだが、出典により訂正。))と聞こゆる人、三千人のつかはれ人を集めて、これを((底本「たれを」。諸本により訂正))あはれみ、ねんころに思ひけるに、この主(あるじ)の思ひ妻、高き楼の上に居て四方(よも)を見渡しけるに、足萎えたる者の、這ふ這ふゐざりつつ水を汲みに行きけり。左右の膝よりも、頭(かしら)なほ引き入りて、人の姿に似ず。世にをかしげなりければ、この女、思ひわくこともなくて、うち笑ひてけり。
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 声を聞きて、「我かかる病に煩ひて、年久しくなりぬ。今初めて人の笑ひ嘲るべきにあらず。これひとへに、君の色を好みて、つかはれ人を軽しめ給ふゆへなり。もし我を捨てぬ御心ならば、笑ひつる人を失なひ給ふべし」と強ひて主に愁ふるに、「おのれが愁へをやすむべし」とは言ひながら、さすがにあるべくもなきことなれば、その後月日を経るに、三千人のつかはれ人、やうやう数少なくなりゆくを、「我、いささかも過つことなし。しかれども、恨みをいだきて遁れ去るも心知り難し」と、おのおのに言ひ下せり。 声を聞きて、「我かかる病に煩ひて、年久しくなりぬ。今初めて人の笑ひ嘲るべきにあらず。これひとへに、君の色を好みて、つかはれ人を軽しめ給ふゆへなり。もし我を捨てぬ御心ならば、笑ひつる人を失なひ給ふべし」と強ひて主に愁ふるに、「おのれが愁へをやすむべし」とは言ひながら、さすがにあるべくもなきことなれば、その後月日を経るに、三千人のつかはれ人、やうやう数少なくなりゆくを、「我、いささかも過つことなし。しかれども、恨みをいだきて遁れ去るも心知り難し」と、おのおのに言ひ下せり。
  
-この中に、殊(こと)に詳(つまび)らかなる者、申していはく、「君、このかたは人をすかし給へり。これ我らが身の上にあらずや。もし、かくのごときならば、なにを頼もしと思ひてか、身を捨て心を励まして、君に仕へ奉るべき」と言へり。主、これを聞きて、浅からぬ年ごろのむつまじさをもかへりみず、この女をたちまちに殺してけり。片輪人(かたはびと)これを見て心ゆきぬ。また、その外のつかはれ人ども、元のごとく帰りにけり。+この中に、殊(こと)に詳(つまび)らかなる者、申していはく、「君、この片輪人をすかし給へり。これ我らが身の上にあらずや。もし、かくのごときならば、なにを頼もしと思ひてか、身を捨て心を励まして、君に仕へ奉るべき」と言へり。主、これを聞きて、浅からぬ年ごろのむつまじさをもかへりみず、この女をたちまちに殺してけり。片輪人(かたはびと)これを見て心ゆきぬ。また、その外のつかはれ人ども、元のごとく帰りにけり。
  
   思ひきやただうち笑みし言の葉の死出の山路に散らんものとは   思ひきやただうち笑みし言の葉の死出の山路に散らんものとは
  
 足萎えたるつかはれ人一人に、顔美しき人を代へ((底本「かつ」で「つ」に「へ歟」と傍書。諸本及び傍書により訂正))けるも、いと情けなきしわざなりや。おほかたこれならず、唐国(からくに)の習ひにて、賤(あや)しき武士(もののふ)なれど、言ひ立ちぬることを、御門もその心ざしをば、やぶらせ給はぬにや。 足萎えたるつかはれ人一人に、顔美しき人を代へ((底本「かつ」で「つ」に「へ歟」と傍書。諸本及び傍書により訂正))けるも、いと情けなきしわざなりや。おほかたこれならず、唐国(からくに)の習ひにて、賤(あや)しき武士(もののふ)なれど、言ひ立ちぬることを、御門もその心ざしをば、やぶらせ給はぬにや。
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   あつめてたれをあはれみねんころに思けるに   あつめてたれをあはれみねんころに思けるに
   このあるしのおもひつまたかき楼のうへにゐて   このあるしのおもひつまたかき楼のうへにゐて
-  よもをみわたしけるにあしなへたる物の/m411+  よもをみわたしけるにあしなへたる物の/m411・k57l 
 + 
 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100182415/57?ln=ja
  
   はふはふゐさりつつ水をくみに行けり左右   はふはふゐさりつつ水をくみに行けり左右
行 30: 行 36:
   このみてつかはれ人をかろしめ給ゆへ也もし   このみてつかはれ人をかろしめ給ゆへ也もし
   我をすてぬ御心ならはわらひつる人をうし   我をすてぬ御心ならはわらひつる人をうし
-  なひ給へしとしゐてあるしにうれふるに/m412+  なひ給へしとしゐてあるしにうれふるに/m412・k58r
  
   をのれかうれへをやすむへしとはいひなからさす   をのれかうれへをやすむへしとはいひなからさす
行 41: 行 47:
   このかたは人をすかし給へりこれ我らか身のう   このかたは人をすかし給へりこれ我らか身のう
   へにあらすやもしかくのこときならはなに   へにあらすやもしかくのこときならはなに
-  をたのもしとおもひてか身をすて心をは/m413+  をたのもしとおもひてか身をすて心をは/m413・k58l 
 + 
 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100182415/58?ln=ja
  
   けまして君につかへたてまつるへきといへり   けまして君につかへたてまつるへきといへり
行 52: 行 60:
     しての山ちにちらんものとは     しての山ちにちらんものとは
   あしなへたるつかはれ人ひとりにかほうつく   あしなへたるつかはれ人ひとりにかほうつく
-  しき人をかつ(へ歟)けるもいとなさけなきしわさ/m414+  しき人をかつ(へ歟)けるもいとなさけなきしわさ/m414・k59r
  
   なりやおほかたこれならすからくにのならひ   なりやおほかたこれならすからくにのならひ
   にてあやしき物のふなれといひたちぬる事   にてあやしき物のふなれといひたちぬる事
   をみかともそのこころさしをはやふらせ給は   をみかともそのこころさしをはやふらせ給は
-  ぬにや/m415+  ぬにや/m415・k59l 
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 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100182415/59?ln=ja
  
text/kara/m_kara021.1417531897.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa