ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:kankyo:s_kankyo030

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
次のリビジョン
前のリビジョン
text:kankyo:s_kankyo030 [2018/07/02 22:27] – [校訂本文] Satoshi Nakagawatext:kankyo:s_kankyo030 [2026/02/09 09:49] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
行 7: 行 7:
  
 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
 +
 +[[s_kankyo029|<<PREV]] [[index.html|『閑居友』TOP]] [[s_kankyo031|NEXT>>]]
  
 昔、それがしの僧都とて、尊き人、ある宮腹の女房に心ざしを移すことありけり。思ひかねてや侍りけん、うち口説き心の底を表はしければ、この女、とばかりためらひて、「なじかは、さまでに煩ひ給ふべき。里にまかり出でたらんに、必ず案内し侍らむ」と言ひけり。この人、ただおほかたの情けかとは思へども、さすが、また、昔には似ずなん思ひ居(を)りける。 昔、それがしの僧都とて、尊き人、ある宮腹の女房に心ざしを移すことありけり。思ひかねてや侍りけん、うち口説き心の底を表はしければ、この女、とばかりためらひて、「なじかは、さまでに煩ひ給ふべき。里にまかり出でたらんに、必ず案内し侍らむ」と言ひけり。この人、ただおほかたの情けかとは思へども、さすが、また、昔には似ずなん思ひ居(を)りける。
行 18: 行 20:
 この人、つゆ物言ふことなし。さめざめと泣きて、「いみじき友に会ひ奉りて、心をなん改め侍りぬる」とて、車に急ぎ乗りて、返りにけりとなん。 この人、つゆ物言ふことなし。さめざめと泣きて、「いみじき友に会ひ奉りて、心をなん改め侍りぬる」とて、車に急ぎ乗りて、返りにけりとなん。
  
-まことに、いみじく賢く侍りける女の心なりけり。今の世にも、さほどおどろおどろしきまでこそなけれども、捨つとなれば、人の身はあらぬものになり侍るにこそ。かの、水の面(おも)に影を見て、身をいたづらになし果てけん((『大和物語』155段))、さこそは廃れけん顔立ては悲しく侍りけめ。+まことに、いみじく賢く侍りける女の心なりけり。今の世にも、さほどおどろおどろしきまでこそなけれども、捨つとなれば、人の身はあらぬものになり侍るにこそ。かの、水の面(おも)に影を見て、身をいたづらになし果てけん(([[:text:yamato:u_yamato155|『大和物語』155段]]参照))、さこそは廃れけん顔立ては悲しく侍りけめ。
  
 小野小町のことを書き記せる物を見れば、姿も着る物も、目を恥しめ侍るぞかし。まして、いたう顔も良からぬ人の、なりゆくにまかせて侍らんは、などてかは、この女房の偽りの姿に異なるべき。いはんや、息止まり、身冷えて、夜を重ね、日を送らん時をや。いかにいはんや、膚(はだへ)ひはれ、膿汁流れて、筋解け、肉(ししむら)解くる時をや。まことに心を静めて、のどかに思ふべし。 小野小町のことを書き記せる物を見れば、姿も着る物も、目を恥しめ侍るぞかし。まして、いたう顔も良からぬ人の、なりゆくにまかせて侍らんは、などてかは、この女房の偽りの姿に異なるべき。いはんや、息止まり、身冷えて、夜を重ね、日を送らん時をや。いかにいはんや、膚(はだへ)ひはれ、膿汁流れて、筋解け、肉(ししむら)解くる時をや。まことに心を静めて、のどかに思ふべし。
-  + 
 +[[s_kankyo029|<<PREV]] [[index.html|『閑居友』TOP]] [[s_kankyo031|NEXT>>]] 
 ===== 翻刻 ===== ===== 翻刻 =====
  
text/kankyo/s_kankyo030.1530538074.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa