text:kankyo:s_kankyo025
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text:kankyo:s_kankyo025 [2015/07/22 14:47] – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | text:kankyo:s_kankyo025 [2018/07/02 22:25] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa | ||
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近ごろ、東の京に、幼くよりとり娘をしたる者ありけり。平家の流なりければ、源平の乱れの後は、ただ命の生けるばかりをいみじきことにて、世を渡ることなど、いひ知らずぞ侍りける。 | 近ごろ、東の京に、幼くよりとり娘をしたる者ありけり。平家の流なりければ、源平の乱れの後は、ただ命の生けるばかりをいみじきことにて、世を渡ることなど、いひ知らずぞ侍りける。 | ||
- | かかりけるほどに、前後相違((底本、「相違」に「さうい」と傍書。)の恨み、昔よりありけることなれば、このとり娘、先立ちて身まかりにけり。その後、さし続きて、このとり親また失せぬ。 | + | かかりけるほどに、前後相違((底本、「相違」に「さうい」と傍書。))の恨み、昔よりありけることなれば、このとり娘、先立ちて身まかりにけり。その後、さし続きて、このとり親また失せぬ。 |
五七日に当れるつとめて、このとり娘の男なりけるもの出で来て、「今日、昔の人侍らましかば、いかばかり営み、たしなみ侍らまし。かまへて((底本、「かまへて(かまゑて)」は「誦経」の傍書。))誦経物一つ、つかうまつらむとし侍るが、いかにもえ叶ひ侍らで、思ひあまり、『これにても侍らん』とて、これをなん持ちてまうで来たる」とて、紙にひき包みたる物を取り出でて、さめざめと声も惜しまず泣きけり。 | 五七日に当れるつとめて、このとり娘の男なりけるもの出で来て、「今日、昔の人侍らましかば、いかばかり営み、たしなみ侍らまし。かまへて((底本、「かまへて(かまゑて)」は「誦経」の傍書。))誦経物一つ、つかうまつらむとし侍るが、いかにもえ叶ひ侍らで、思ひあまり、『これにても侍らん』とて、これをなん持ちてまうで来たる」とて、紙にひき包みたる物を取り出でて、さめざめと声も惜しまず泣きけり。 |
text/kankyo/s_kankyo025.1437544028.txt.gz · 最終更新: 2015/07/22 14:47 by Satoshi Nakagawa