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text:kankyo:s_kankyo019 [2015/07/04 16:03] – 作成 Satoshi Nakagawatext:kankyo:s_kankyo019 [2026/02/02 10:02] (現在) – [校訂本文] Satoshi Nakagawa
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-昔、比叡の山に、なにがしとかやいひける人のもとに、使はれける中間(ちうげん)僧ありけり。主(しう)のために一事(ひとこと)も違ふ振舞なし。いみしく真心にて、いとほしき者にぞ思はれたりける。+[[s_kankyo018|<<PREV]] [[index.html|『閑居友』TOP]] [[s_kankyo020|NEXT>>]] 
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 +昔、比叡の山に、何某(なにがし)とかやいひける人のもとに、使はれける中間(ちうげん)僧ありけり。主(しう)のために一事(ひとこと)も違ふ振舞なし。いみしく真心にて、いとほしき者にぞ思はれたりける。
  
 かかるほどに、年ごろ経て後、夕暮れには必ず失せて、つとめて疾く出で来ることをしけり。主もいみじく憎きことに思ひて、「坂本に行き下るに((「に」は底本「と」。諸本により訂正。))こそあめれ」など思ひけり。帰りたる時も、うちしめりて、人にはかばかしく面(をもて)なと会はすることもなし。常には涙ぐみてのみ見えければ、「行き交ふ所のことを飽き足らず思ひて、かかるにこそ」とぞ、ゆるぎなく主も人も思ひ定めける。 かかるほどに、年ごろ経て後、夕暮れには必ず失せて、つとめて疾く出で来ることをしけり。主もいみじく憎きことに思ひて、「坂本に行き下るに((「に」は底本「と」。諸本により訂正。))こそあめれ」など思ひけり。帰りたる時も、うちしめりて、人にはかばかしく面(をもて)なと会はすることもなし。常には涙ぐみてのみ見えければ、「行き交ふ所のことを飽き足らず思ひて、かかるにこそ」とぞ、ゆるぎなく主も人も思ひ定めける。
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 善し悪しは代れども、輪廻(りんゑ)の種となることは、これ同じかるべし。必ず善し悪しにつけて、慈悲心を先として、「あはれ、いかなるものの営み、たしなみて、『わびし』と思ひつらん」と、あはれをかくべし。うき世にあり経て、人に交らひけるならひの口惜しさは、さしあたりて、人の目立たしく思ひたるときには、さは思へども、忍びがかたきことも侍るべきにや。それにつけても、「あはれ、無益(むやく)に侍るべきことかな。夢の中(うち)のかりそめごとゆゑに、長き夜に眠(ねぶ)らんこと、からくぞ侍るべき」など、思ふべきにや。かやうにだに思ひて、少し悲しむ心も侍れかし。 善し悪しは代れども、輪廻(りんゑ)の種となることは、これ同じかるべし。必ず善し悪しにつけて、慈悲心を先として、「あはれ、いかなるものの営み、たしなみて、『わびし』と思ひつらん」と、あはれをかくべし。うき世にあり経て、人に交らひけるならひの口惜しさは、さしあたりて、人の目立たしく思ひたるときには、さは思へども、忍びがかたきことも侍るべきにや。それにつけても、「あはれ、無益(むやく)に侍るべきことかな。夢の中(うち)のかりそめごとゆゑに、長き夜に眠(ねぶ)らんこと、からくぞ侍るべき」など、思ふべきにや。かやうにだに思ひて、少し悲しむ心も侍れかし。
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text/kankyo/s_kankyo019.1435993411.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa