ユーザ用ツール

サイト用ツール


text:jikkinsho:s_jikkinsho01-07

差分

このページの2つのバージョン間の差分を表示します。

この比較画面へのリンク

両方とも前のリビジョン前のリビジョン
次のリビジョン
前のリビジョン
text:jikkinsho:s_jikkinsho01-07 [2015/08/25 09:34] – [1の7 後冷泉院御位の時天狗あれて世の中騒がしかりけるころ] Satoshi Nakagawatext:jikkinsho:s_jikkinsho01-07 [2026/03/02 13:56] (現在) Satoshi Nakagawa
行 3: 行 3:
  
 ===== 校訂本文 ===== ===== 校訂本文 =====
 +
 +[[s_jikkinsho01-06|<<PREV]] [[index.html|『十訓抄』TOP]] [[s_jikkinsho01-08|NEXT>>]]
  
 後冷泉院御位の時、天狗あれて、世の中騒がしかりけるころ、西塔に住せる僧、あからさまに京に出でて帰りけるに、東北院の北の大路に、童部五六人ばかり集まりて、物をうち凌じけるを、歩み寄りて見れば、古鵄(ふるとび)のよに恐しげなるを、縛り屈(かが)めて、楚(ずはえ) 後冷泉院御位の時、天狗あれて、世の中騒がしかりけるころ、西塔に住せる僧、あからさまに京に出でて帰りけるに、東北院の北の大路に、童部五六人ばかり集まりて、物をうち凌じけるを、歩み寄りて見れば、古鵄(ふるとび)のよに恐しげなるを、縛り屈(かが)めて、楚(ずはえ)
行 18: 行 20:
  
 「こはいかにしつるぞ」とあきれ騒ぎて見回せば、もとありつる山中の草深なり。あさましながら、さてあるべきならねば、山へ登るに、水飲みのほどにて、ありつる法師出で来て、「さばかり契り奉りしことをたがへ給ひて、信を発し給へるによりて、護法、天童下し給ふ。『いかでか、かばかりの信者をば、たぶろかすぞ」とて、われらをさいなみ給へるあひだ、雇ひ集めたりつる法師ばらも、からき肝つぶして逃げ去りぬ。おのれが片方(かたかた)の羽がひを打たれて、術なし」とて、失にけり。 「こはいかにしつるぞ」とあきれ騒ぎて見回せば、もとありつる山中の草深なり。あさましながら、さてあるべきならねば、山へ登るに、水飲みのほどにて、ありつる法師出で来て、「さばかり契り奉りしことをたがへ給ひて、信を発し給へるによりて、護法、天童下し給ふ。『いかでか、かばかりの信者をば、たぶろかすぞ」とて、われらをさいなみ給へるあひだ、雇ひ集めたりつる法師ばらも、からき肝つぶして逃げ去りぬ。おのれが片方(かたかた)の羽がひを打たれて、術なし」とて、失にけり。
 +
 +[[s_jikkinsho01-06|<<PREV]] [[index.html|『十訓抄』TOP]] [[s_jikkinsho01-08|NEXT>>]]
      
 ===== 翻刻 ===== ===== 翻刻 =====
  
-  後冷泉院御位時、天狗あれて世中さはかしかり +  後冷泉院御位時、天狗アレテ世中サハカシカリ 
-  ける比、西塔せる僧、白地けるに、東/k24+  ケル比、西塔セル僧、白地ケルニ、東/k24・s15r 
 + 
 +  北院ノ北ノ大路ニ童部五六人ハカリ集リテ、物ヲ 
 +  ウチレウシケルヲ、歩ミ寄テ見ハフルトヒノヨニオソ 
 +  ロシケナルヲ、シハリカカメテ、スハヘニテ撲ナリケリ、 
 +  アナイミシ、ナトカクハスルソトイヘハ、殺テ羽取ラムト 
 +  云、此僧慈悲ヲ発テ、扇ヲトラセテ是ヲ乞請テ放 
 +  遣ツ、ユユシキ功徳ツクレリト思テ往ホトニ、キレツツ 
 +  ミノ程ニ、ヤフヨリコトヤウナル法師ノ歩出テ、ヲクレ 
 +  シト歩ヨリケレハ、ケシキ覚テカタカタヘ立寄テ過 
 +  サムトシケル時彼法師近ヨリテ云ヤウ、御哀蒙 
 +  テ命生テ侍レハ、其ノ悦聞エントテナト云、僧立返テ/k25・s15l 
 + 
 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100231807/15?ln=ja 
 + 
 +  エコソ覚エネ誰人ニカト問ケレハ、サソオホスラム東北 
 +  院ノ北ノ大路ニテ、カラキメミテ侍ツル老法師ニ侍リ、 
 +  生ルモノハ命ニ過タル物ナシ、カハカリノ御志ニハ争 
 +  カ報シ申ササラム、何事ニテモ懇ナル御願アラハ、一 
 +  事叶ヘ奉ラムヲノレハカツシラセ給タルラム、小神通 
 +  ヲ持タレハ、ナニカハカナヘサラムト云、浅猿クメツラカ 
 +  ナルワサカナトムツカシク思ナカラ、コマヤカニイヘハ、ヤ 
 +  ウコソアルラメト思テ、我ハ此世ノ望更ニナシ、年七 
 +  十ニナレリタレハ、名聞利欲アチキナシ、後世コソオソ 
 +  ロシケレトモ、其ハ争カ称ヘ給ヘキナレハ、申ニ及ハス、/k26・s16r
  
-  北院の北の大路に童部五六人はかり集りて物を +  但釈迦如来ノ霊山ニテ説法シ給ケムヨソヲヒコソ、 
-  うちれうしけるを歩み寄て見はふるとひのよにおそ +  メテタカリケメト思遣レテ朝夕心ニカカリテミマ 
-  ろしけなるをしはりかかめて、すはへにて撲なりけり、 +  ホシク覚レ其有様マナヒテ見セ給ナンヤトイトヤ 
-  あないみし、なとかくはするそといへは、殺て羽取らむと +  スキ事也サヤウノ物マネスルヲノレカ徳トスルナリト 
-  云、此僧慈悲を発て扇をとらせて是を乞請て放 +  云サカリ松ノ上ノ山ヘ具テ昇ヌココニテ目ヲフ 
-  遣つゆゆしき功徳つくれりと思て往ほとに、きれつつ +  サキテ居給ヘ仏ノ説法ノ御声ノ聞ン時目ヲハ 
-  みの程にやふよりことやうなる法師の歩出てをくれ +  アケ給ヘ但穴賢コ貴シトオホスナ信タニ発給ハハ 
-  しと歩よりけれはけしき覚てかたかたへ立寄て過 +  ヲノレカタメニアシカラムト云テ山ノ峰ノ方ヘ登ヌ、ト 
-  さむとしける時彼師近よりて云やう、哀蒙 +  ハカリシテ音聞レハ、目ヲミアケタルニ、山ハ霊山 
-  て命生て侍れは其の悦聞えんとてなと云僧立返てk25+  トナリ地ハ紺瑠璃ト成テ木ハ七重宝樹トナリテ、/k27・s16l
  
-  えこそ覚えね誰人にかと問けれは、さそおほすらむ東北 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100231807/16?ln=ja
-  院の北の大路にて、からきめみて侍つる老法師に侍り、 +
-  生るものは命に過たる物なし、かはかりの御志には争 +
-  か報し申ささらむ、何事にても懇なる御願あらは、一 +
-  事叶へ奉らむをのれはかつしらせ給たるらむ、小神通 +
-  を持たれは、なにかはかなへさらむと云、浅猿くめつらか +
-  なるわさかなとむつかしく思なから、こまやかにいへは、や +
-  うこそあるらめと思て、我は此世の望更になし、年七 +
-  十になれりたれは、名聞利欲あちきなし、後世こそおそ +
-  ろしけれとも、其は争か称へ給へきなれは、申に及はす、/k26+
  
-  釈迦如来の霊山にて説法しけむよそをひこそ、 +  釈迦如来師子床ノ上ニオハシマス、普賢文殊左右 
-  めてたかりけめと思遣れて朝夕心にかかりてみま +  ニ坐シヘリ菩薩聖衆雲霞ノコトシ帝釈四王竜 
-  ほしく覚れ其有様まなひて見せなんやと、いとや +  神八部所モナクミチミテリ空ヨリ四種ノ花フリ 
-  すき也さやうの物まねするをのれか徳とするなりと +  テ香シキ風吹天人雲ニ列テ微妙ノ音楽ヲ奏 
-  云てさかり松の上の山へ具て昇ぬ、ここにて目をふ +  ス、如来宝花ニ坐シテ甚深ノ法門ヲ演説シ 
-  さきて居給へ、仏の説法の御声の聞ん時目をは +  事カラ大方心モ言モ及ヒカタシ、シハシコソイミシク学 
-  あけ給へ、但穴賢こ貴しとおほすな、信たに発給はは +  ヒ似セタリナト興有テ思ケレサマサマノ瑞相ミルニ 
-  をのれかためにあしからむと云て山の峰の方へ登ぬ +  在世ノ説法ノ砌ニノソメルカ如シ、信心忽ニヲコリテ 
-  はかりして法の御音聞れは、目をみあけたるに、山は霊山 +  随喜ノ涙眼ニ浮ヒ渇仰ノ思骨ニトヲル間手ヲ額 
-  となり地は紺瑠璃と成て、木は七重宝樹となりて、k27+  ニアテテ帰命頂礼スルホトニ、山オヒタタシクカラメk28・s17r
  
-  釈迦来師子床の上におはします普賢文殊左右 +  キサハキテ、アリツル大会カキケツクニウセヌ夢 
-  に坐し給へり菩薩聖衆雲霞のことし帝釈四王竜 +  ノ覚カ如シコハイカニシツルソトアキレサハキテ見 
-  神八部所もなくみちみてり空より四種の花ふり +  廻セハモト有ツル山中ノ草深ナリ、アサマシナカラ 
-  て香しき風吹天人雲に列て微妙の音楽を奏 +  サテアルヘキナラネハ山ヘ登ニ、水ノミノ程ニテ有ツ 
-  如来宝花に坐して甚深の門を演説し其 +  ル法師出来テサハカリ契タテマツリシ事ヲタカ 
-  事から大方心も言も及ひかたししはしこそいみしく学 +  ヘ給テ信ヲ発シ給ヘルニヨリテ天童下、 
-  ひ似せたりなと興有て思けれさまさまの瑞相みるに +  争カカハカリノ信者ヲハタフロカスソトテ我等ヲサ 
-  在世の説の砌にのそめるか如し信心忽にをこりて +  イナミ給ヘル間、雇集タリツル師原モカラキ肝 
-  随喜の涙眼に浮ひ渇仰の思骨にとをる間、手を額 +  ツフシテ逃去ヌ己カカタカタノ羽カヒヲウタレテ術 
-  にあてて帰命頂礼するほとに山おひたたしくからめk28+  ナシトテ失ニケリ、/k29・s17l
  
-  きさはきて、ありつる大会かきけつ如くにうせぬ夢 +https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100231807/17?ln=ja
-  の覚か如し、こはいかにしつるそとあきれさはきて見 +
-  廻せは、もと有つる山中の草深なり、あさましなから +
-  さてあるへきならねは、山へ登に、水のみの程にて有つ +
-  る法師出来て、さはかり契たてまつりし事をたか +
-  へ給て信を発し給へるによりて、護法天童下給ふ、 +
-  争かかはかりの信者をはたふろかすそとて、我等をさ +
-  いなみ給へる間、雇集たりつる法師原も、からき肝 +
-  つふして逃去ぬ、己かかたかたの羽かひをうたれて術 +
-  なしとて失にけり、/k29+
  
text/jikkinsho/s_jikkinsho01-07.1440462878.txt.gz · 最終更新: by Satoshi Nakagawa